Unhistory Channel 152 - パラドゲー記録

Paradox Interactive, Crusaderkings2, AAR

ただ侵攻を待つ日々
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恐ろしい日々でした。
ひとつの夜、ひとつの昼がすぎてゆくたび、あの峰々のむこうにサルマンの軍勢が召集されていくのです。今やわたしたちは恐れをこめて霧ふり山脈を見上げるようになりました。

2年のうちに必ずサルマンは攻めてくる。それが1年後なのか、3月後なのか、それとも明日なのか。知るすべはありませぬ。
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わが夫ブラン・アヴァンク=ルスは悩みに悩み、やつれ果てました。
そしてある夜、わたしの閨を訪れてこう告げたのです。

「アウスラ、俺は間違っていた。
中つ国はひとつの国だ。戦乱はいつか必ずこの地にも訪れる」
「存じております」
「サルマンだけの話ではない。白の勢力と冥王のことがある。近いうち、いずれの民も旗幟をあきらかにすることになろう」
「すでに決めておいでなのですね」
「そうだ。臣従を誓おうと思う」
「いずれの国をお考えなのですか」

ブランはしばらく言いよどんでいました。
そして次のように告げたのです。
「ゴンドール」
gondor
わたしは驚き呆れました。
ゴンドール?
イセンガルドのむこうの、カレナルゾン平原のまた向こうの、白の山脈のかなたのヌーメノール人がわたしたちの何の助けになるでしょうか?

3年前ならそれでもよかった。しかし、かの国はすでにいくさの泥沼にはまっておりました。相手は強大なモルドールです。冥王とオークの国です。

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 冥王サウロン
 指輪を失ったせいかその影が薄れている
 にも関わらずこの強大な力

ずいぶん南の事情に明るいとお思いでしょうね?
褐色人を馬鹿にしたものではありません。わたしたちは同じハレスの民であるアンドラストの商船団から情報を得ていました。灰色川河口はゴンドール西部のアンドラスト公領に近く、ペラルギアからの新鮮な情報がしばしば得られるのです。

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褐色人の密使カドワロン
「王都ミナスティリスでは老執政デネソールが倒れました。
その後継者ボロミアもいずこかで討ち死にしたそうです。彼の遺骸と角笛だけが大河を下ってまいりました。オークどもは大河を渡り、旧都オスギリアスの両岸をものにしました。

そして先のネーニエ月、ミナスティリス前面で大きな会戦がありました。ボロミアの弟君ファラミアはペレンノール野に出撃しましたが、オークどもに打ち倒され意識が戻らぬとのことです。今はロスサールナッハ領主フォルロングが王国の政務をとっています」

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 ゴンドール執政ファラミア、重体

わたしはヌーメノール人に勝ち目はないと考えました。
それでブランを必死で説得したのです。

「早晩、かの国はモルドールに飲み込まれます。負け方に賭けるようなことはおよしなさいませ」
「冥王に従えというか。われらは自由の民ぞ」
 
「いいえ。イセンガルド国があります。恥をしのんでサルマンに臣従なさいませ。侵略される前に身中に入り込んでしまうのです。領地さえ安堵されればこっちのもの。白の魔法使いがどれほどの者か存じませんが、やりようはいくらでもあります」
「アウスラ、何をたくらんでおる」
「お忘れですか、わが君。イセンガルドで邪魔なのはサルマンと少数の半オークだけ。あそこは褐色人がほとんどを占める国なのですよ」

サルマン
 永遠の命を持つマイアの恐ろしさをアウスラは知らない

しかしわたしがそう言った瞬間、夫は顔を真っ赤にして叫びました。
「たった1度でもサルマンに臣従しろというのか!
それはない、絶対にない! 冥王よりも100倍悪い!」

わたしは黙りました。夫は心の底から腹を立てていました。
もうこの話は終わりました。わたしは族長の妃にすぎませぬ。決めるのは夫です。

こうして褐色人の部族は独立を捨て、ヌーメノール人に臣従することになりました。
しかしひとつだけ引っかかる事がありました。
ブランが支配するエネドワイス地域の大族長位です。

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いまゴンドールに臣従してしまえば、ゴンドールがエネドワイス王位を宣言してしまうでしょう。褐色人が懸命に開拓してきた土地の王位が、労せずしてヌーメノール人のものとなるのです。

「だが大族長を号するだけの蓄えがない」
ブランは苦々しい顔で言いました。
大族長につくとなれば諸侯や近隣の部族に贈り物をせねばなりません。しかしガルトレヴ館はまだそこまでの富を貯め込んでいないのです。

「金を貯め、大族長を宣言したのちゴンドールに臣従する。これでいくしかあるまい」
サルマンが攻めてくるのと、創設金がたまるのとどちらが早いか。
博打です。薄氷を踏むような選択肢です。

毛皮を積んだ隊商が四方八方に旅立ちました。
霧ふり山脈のドワーフの領主に頼み込んで金貨を借り受けました。
ガルトレヴ館の倉には厳重に錠がおろされ、日々の食卓はひどく慎ましいものとなりました。
こうまでして、サルマンが攻めてくるほうが早ければすべておしまいなのです。

「えらいところに嫁にきてしまった……」
わたしは心底そう思いました。

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11371年(西方歴)、ナルクウェリエ月。
ついにわが夫ブラン・アヴァンク=ルスは大族長 High Warlordを名乗り、ハレスの民を統べる者として『緑地に白鹿』の紋章を帯びました。
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 11371、エネドワイス王位創設
 エリアドール地域の多彩なプロヴィンスは主のない荒れ地
 ゴンドールはオスギリアスを失った
 谷間の国はリューンに征服されたが闇の森エルフと結んで反攻中 

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 イセン谷の族長トレフ
 ハレス系の5族長が王国に加入 

「偉大なる族長ブランよ。ハレスの名において、わがイセン谷の民は汝のもとへ馳せ参じる。共にサルマンの野望を打ち砕き、強きエダインの国を作り上げよう!」

ハレス系の独立族長たちが続々とガルトレヴを訪れ、ブランに忠誠を誓います。サルマンの脅迫のことはすでにエリアドールの全地に知れ渡っていたのでした。

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野伏たちもガルトレヴ館を訪れました。
なんとイセンガルドに対抗して助力してくれるとのこと。

「アウスラどの、これまで野伏と褐色人はあまり仲がよくはありませんでしたね。でも、ルダウアの山の民やブリー郷をカルン=ドゥムのオークから本当に守っているのはわれら野伏たちだったのです。

さてエネドワイスの勢威、ハレスの民を統べるブラン王よ。このたびの助力の申し出、受けてくださるか」
野伏の副首領ハルバラドは礼儀正しくそう言いました。

それでわたしは得心がいきました。野伏の馳夫がよくルダウアを訪れていたのはそのためだったのか、と。

けれど夫は野伏たちに型通りの挨拶しかせず、ハルバラドの話にも顔をそむけていました。夫は若き日のルダウアの戦いを思い出していたのでしょう。誰だって自分の初陣が誰か別の人たちのおかげで勝てていたなんてこと、聞いて嬉しくはありませんもの。

運命のとき
11372年、ヒーシメ月。侵攻期限まで4ヶ月を切りました。
しかしサルマンは続々と応援にかけつける諸族の軍勢を見ておじけづいたのでしょうか。まるで行動に移す気配がありませぬ。
カドワロン
密使カドワロン 
「白の側近殿、約束の品です。どうぞ」
「やや、長窪印のパイプ草ではないか。これは……なんと香り高い……。おたくと疎遠になってからホビット庄産は品薄でな。いやありがたい」
「さすが白の側近殿はお目が高い。いや『お鼻が』と申すべきかな。このカドワロン、ご入用ならいくらでも運んでまいりますぞ」
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 決死の外交改善効果あり? サルマン脅威度は80%を切った

サルマンはなぜ動かないのでしょう。
わたしたちはイセンガルドに密使を派遣し、サルマン側近の褐色人たちに贈り物をして懐柔工作をしていたのです。効果のほどはわかりませぬが、とにかく侵攻されなければよし。

そして運命のスーリメ月がきました。

サルマンはドゥンランドに侵攻することなく、軍勢を解散しました。
わたしたちは助かったのです!
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 その頃サルマンは「木の羊飼い」エントたちの攻撃を受けていた

ともかくわたしたちは生き残り、ハレスの民の同士討ちは未然に避けられました。
ブランはゴンドールへの臣従を正式に取り下げました。サルマンが攻めてこないとなれば、ヌーメノール人に用はありませぬ。

ブランは勢いづいて触れを出しました。
「今後は全力で灰色川対岸(旧アルノールのカルドラン王領)の開拓をする。そして野伏の所有するサルバドの渡しを奪取する。そもそも灰色川流域は元から住んでいたハレスの族のものなのだ!」

危機にあって助けてくれた野伏を恩知らずにも攻めると知って、わたしは暗い気持ちになるのを抑えきれませんでした。

馳夫のこと
その半年後、ヤヴァンニエ月。
夫ブランが血の気を失うような知らせが南から舞い込んできました。
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ゴンドール軍がペレノール野の決戦でモルドール軍を打ち破ったと聞き、わたしたちは喜びました。しかしそれを指揮していたのがあの野伏の馳夫で、彼がゴンドールの王になったという話を聞いてみな目を白黒させてしまいました。
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聞けば聞くほどとんでもない話です。
野伏は古い王国のヌーメノールの家系だったこと、身分を隠してずっとアルノールとゴンドールを防衛していたということが中つ国の全地に明かされました。道理で彼らは長命だし、強かったわけです。
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そしてアルノールとゴンドールは統一され、王国はついに王を得ることになりました。今後は馳夫をエレスサール王と呼ぶことになるでしょう。
 
そして北辺の小領だと思っていた野伏が、今では超大国ゴンドールの王直轄領なのです。サルバドを奪取するという夫ブランの望みはほぼ失われました。
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しかしどうも話がうますぎる気もしました。
前執政ファラミアは重傷をおい、意識不明の重体だというのに都ミナスティリスを追われて迅速にヘネスアンヌーンに身柄を移されました。
そこは山中の小さな砦で、領土ともいえない領土だといいます。
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 ガンダルフ退場

そして馳夫と同盟していた魔法使いサルクンはもはやこの世にいないのではないかという噂がしきりに交わされていました。彼はどこへ行ってしまったのか?

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ナルヴィンニエ月、少数の手勢を連れて急ぎ北上するエレサール王の姿が南街道で見られました。夫ブランは「裂け谷にエルフの姫を娶りに戻ったのだろう」と言い、王の一行に手出しをせぬよう領内に触れを出しました。

しかし王はすぐに北の野伏を連れて都へ戻り、その防備を固めるよう命じました。いったい王は何を考えているのか? 幸せな王妃と見事な婚礼が見られると期待していた人々は眉をひそめました。

一方、モルドールの暗雲は急速に色濃くなりつつありました。

暗雲きたる
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 指輪の旅の失敗
 
その日、東方の暗雲が霧ふり山脈を越え、昼日中のガルトレヴ館を闇に包みました。
犬は騒ぎ、蜂蜜酒は苦くなりました。
「何かとても悪いことが起きた」
わたしたちにわかるのはそれだけでした。
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 指輪保持者、ホビット庄のフロドは滅びの山で自ら命を絶った
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 サウロンは指輪をその指にはめた

北のルダウアの山々では人々が恐ろしげに空を見上げました。
ロスロリエンの森では魔法の奥方が森の奥にこもりました。
霧ふり山脈のドワーフたちは需要を見込んで武器を作り始めました。
 
中つ国の全地がおびえ、不安に震えていました。
 
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しかしわたしは、このアウスラ・ブトヴィダセンは決しておびえることはありませんでした。
 
なぜならわたしは新たな命をこの体に宿し、二人の幼な子に恵まれていたからです。中つ国がどのような世界に変じようとも、この子たちだけは守る。山々の峰を越えて重く垂れ込める雲を眺めながら、わたしはそう決意していました。
 

館の女主人が出迎える
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 館の女主人アウスラ・ブトヴィダセン

ガルトレヴの高き館へようこそ。
客人よ。そなたは学があり、ゴンドールびとのように声を描くことができると聞きました。

ぜひわたしの話を聞いて、羊皮紙の束にして残してほしい。そうしてわが夫ブラン・アヴァンク=ルスが勇敢に生きたことを後世に伝えてほしいのです。ゴンドールの大公たちがそうしているように。

さあ、ここへ蜂蜜酒をもて! スグリと香草を入れた上等の酒を!
ガルトレヴ館は客人を渇いたままにさせてはおきませぬ。

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さて、何から話しましょうか——。
やはり『指輪戦争』が始まった時のことを聞きたいでしょうか。

でも少し回り道をさせてください。わたしたちハレスの民のことはあまり知られておりませぬ。わたしたちについて知ってもらってから、物語に移りましょう。

エダイン(人間)に3種族ありといいます。
ベオルの民、ハレスの民、ハドルの民です。人間はこの順番で中つ国へやってきました。

ベオルの民は遠い昔にオークによって鏖殺されました。神々の怒りによってベレリアンドが水没したとき、あとの2族はヌーメノールへ渡り、混ざってヌーメノールびとになりました。

しかし中つ国に残った者もいました。それがわたしたちの祖先です。
こうして茶色髪のハレスの民は灰色川の岸辺に栄え、金髪のハドルの民は霧ふり山脈の向こうに王国を築くことになったのです。
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 11362年(第三紀3018年) ハレス系民族の分布図:
 ルダウアの山の民(hill-men)
 ブリー郷の民(men of bree)
 ドゥンランドの褐色人(dunlending)
 灰色川河口の諸族(dunlending,daoine,druwaithing)
 イセン川流域の諸族(dunlending,druwaithing)
 ゴンドールのハレスの民(dunir)

神々の2度目の怒りによって愚かなヌーメノールが海へ沈んだとき、その残党がわたしたちの土地へ攻めてきました。森を焼き、蓄えを奪い、人々を獣のように追い立てたのです。それでハレスの民は今でもばらばらに住んでいます。

わたしたちは『褐色人』と呼ばれています。それはヌーメノールびとに対する怒りに灼かれ、ハレスの民の肌が焦げたからです。
客人、笑っていますね。嘘だというのですか?
では今宵、客人の寝床にわたしたちの巫女を1人つかわしましょう。己の目で確かめてみればよい。

それでは物語を始めましょうか——おお、大変な速さでわたしの言葉を紙の上に置いていくのですね。そなたはこの魔法にさぞ修練を積んだに違いありませぬ。
 
大いなる年が始まる
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指輪戦争が始まった『大いなる年』。
わたしは北のルダウアからこのドゥンランドへ嫁いできました。褐色人の族長ブラン・アヴァンク=ルスの妻となるために。

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ルダウアは北にあるハレス系の山岳民の国です。わが父ヴァイニウスは生涯をかけてカルン=ドゥムの悪しき軍勢と対峙してきました。

ずいぶん驚くのですね。オークどもと第一線で戦っているのは、エルフでもなく、フォルゴイルでもなく、わたしたち自由なハレスの民なのですよ。ああ、本当にわたしたちの事は知られてはいないようですね。
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わが夫ブランも若いころ北へ来ています。父ヴァイニウスと鞍を並べて何度も戦場へ赴きました。彼はとても勇敢だったと聞いています。その頃わたしはまだ小さな女の子でした。ブランと会ったかもしれませんが、覚えていません。

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ルダウアとドゥンランドは昔から行き来が盛んです。
ルダウアまでは遠いように見えますね。たしかに広大な荒れ地を横切っていかねばなりません。しかしガルトレヴの近くには昔の南北街道が通っています。これを北に行き、サルバドで灰色川を渡って右岸をさかのぼればわたしの故郷、ルダウアです。

わたしも嫁入りのときにこの街道を通りました。人っ子一人いない荒漠たるエネドワイスの景色は今でもよく覚えています。

わたしはガルトレヴにはすぐ馴染みました。言葉も同じだし、同郷の山岳人がたくさんいたからです。踊るのが好きだったので、ヴァリエの1人にちなんで「山から来たネッサ」と呼んでからかわれたものです。

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さて、我が夫ブランは大きな望みを抱いておりました。
 
ある夕暮れ時、館の望楼の上でブランはわたしの手を取りこう言ったのです。『アウスラ、俺はハレスの王国を打ち立てたいのだ』と。

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本当のエダインの王国。灰色川流域のハレスの民を統合し、エネドワイスをふたたびハレスの民で満たしたいというのです。
 
できぬことではありません。
なぜならこの地域の過半は無住であり、ドゥンランドには褐色の民が満ちあふれていたからです。

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 エネドワイスの植民:第1段階
 婚姻で威信300を稼ぎ、それぞれ威信100を消費して3領を開拓
 CK2:MEPの開拓はウィルダネス(大自然)への「宣戦」という形をとる

ルダウアの王女であるわたしと結婚したことで、ブランはハレスの民の中でもっとも勢威ある族長と見なされていました。彼のために働こうと多くの若者がガルトレヴに集まってきました。

ブランは彼らに斧を持たせ、エネドワイスの荒れ地へ進軍しました。愚かなヌーメノールびとが撤退して以来、これらの土地に住む人はいなかったのです。

旧時代の樹木の精霊フオルンたちの抵抗があったと聞いています。でも、そんなものはもはや人間の敵ではありませんでした。斧が振るわれ、土地はふたたびエダインのものとなりました。

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しかしこれらの新領地に住民は少なく、気風も荒れたままです。本腰を入れて植民をするには威信も金も足りませんでした。

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エネドワイス開拓に反対の人もおりました。ナン=レグリンの族長トモスと族長ドムナルがそうでした。ブランの勢力があまりに大きくなるのを恐れていたのです。それで彼らはブランの留守中に反乱を起こしました。

わたしはすぐにブランの弟エフニシエンとニシエンを館に呼び出し、2人の忠誠を確かめました。そして夫が帰ってくるまでガルトレヴを防衛するよう命じたのです。エフニシエンたちは手勢を率いてよく持ちこたえました。

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ブランの軍勢が帰還すると反乱はすぐに鎮圧されました。しかしこの戦いで夫は顔に大きな傷を負い、それは一生の間消えることはありませんでした。

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 恩賞として上の弟エフニシエンには新開拓のグワスロ地方、
 下の弟ニシエンにはドゥンランドの一部が与えられた

白の会議とサルマンについて知る
翌年のスーリメ月のことです。
取引のあるブリー村から隊商が到着し、北国のさまざまな産品がもたらされました。宴の席でわたしは知己であるブリー郷の商人と話しておりました。
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 ブリー郷の商人ノートン・ピックソーン

「アウスラ様、耳よりな噂があります。ホビット庄で大変な魔法の品が発見されました。品物は『白の会議』が確保したそうですぞ」

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 11363年、『一つの指輪』発見さる

わたしは『白の会議』について何も知らなかったのでそう言いました。すると彼はこう答えました。

『白の会議』はエルフ諸侯の同盟です。魔法使いも一枚噛んでいます」
「白の賢者サルマンのような?」
「いや、サルマン様は騙されて『会議』を乗っ取られた。いま同盟を牛耳っているのは灰色のガンダルフです」

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 灰色のガンダルフ

それはとても奇妙な話に思えました。
よく野伏と一緒に街道筋をうろつきまわっているガンダルフが?
あの薄汚れた老人がそんな力を持っているとはとうてい思えませんでした。

「サルマンはそのことを知っているのですか? 敵がそういった魔法を手に入れたこと、すぐに彼に知らせなくてはなりますまい」
「おっしゃる通り。隊商は明朝イセンガルドへ向かい、できるだけ速やかにサルマン様に事件をお伝えするつもりです。もっとも、すぐれた魔法の使い手であるサルマン様のこと、すでに事情をつかんでおるかもしれませんな」

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白の賢者サルマンはわたしたちの同盟者であり、教師でした。
彼が立ち上げた国イセンガルドはほとんど褐色人の国で、副官も金庫番もみな褐色人。ヌーメノールびとの建てたオルサンク要塞には5000の同胞が駐屯し、ローハン国の侵略に備えていました。

わたしたちは魔法使いのサルマンとうまくやっていました。イセンガルドに使節と祭司長を常駐させていたほどです。

サルマンは進んだ冶金術を教えてくれましたし、とても親切でした。褐色人の仲買人たちはホビット庄で穀物やパイプ草を買い付けて、南北街道を通ってイセンガルドに卸していました。サルマンはこの上ない上客だったのです。

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ただ、ひとつだけ気に食わないことがありました。
サルマンがオルサンク要塞にオークを飼っていたことです。オークはわたしたちの敵です。人間とは相容れませぬ。決して。

さて、知らせを受け取ったサルマンはいたく不興だったそうです。イセンガルドからは「ホビットと人間の混じった隊商を見かけたらすぐに報告してくれ」と依頼がありました。わが夫ブランは荒れ地の見張りを増員し、灰色川の岸辺にも監視を置きました。

でも成果はなかったと聞いています。
それはそうでしょう。ホビットがブリー村より外へ出るのはずいぶん珍しいことですもの。

要請きたる
それから数年が経ったころ、サルマンはわたしたちに使いをよこしました。使いの者は言いました。
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 11365年ウリメ月、サルマンからの要請

「イセンガルドの国主、堅忍不抜の技巧者、白の賢者サルマン様は、たびかさなるローハン国人の略奪、殺人、焼き討ちに耐えかね、ここにローハンに対する大懲罰軍を出撃させよとお命じになりました。

馬飼いどもの非道をただす好機です。友邦であるドゥンランドにおかれては、ぜひ援軍を出していただきたい!」

わが夫ブランは思わず立ち上がりました。そして使いの者の手を取るとこう叫んだのです。

「いまこそフレカの恨みを晴らすとき! フォルゴイル(藁頭)の首を刎ねるため、とっておきの斧を研いでカレナルゾンの野へ馳せ参じよう」

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 褐色人(黄)とローハン人(緑)の勢力圏
 西部ではエネドワイスの開拓が進行中

イセンガルドの向こうにはフォルゴイル(ローハン人)が住んでいます。
彼らこそはハドルの末裔。金髪の北の民。
遠い昔に別れ、相争ってきたハレスの民の宿敵です。

サルマンはすでに前年までにイセンの南岸へ攻め入り、フォルゴイルの王セオデンから3領を奪っていました。彼は驚くべき魔術によってセオデンを骨抜きにしていたと聞きます。

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 ローハン王セオデン
 サルーマンの魔術による無力化(右端trait)をくらっている


使いの者は続けました。

「サルマン様はこう仰せです。
『ローハンの全地を手に入れ、アンドゥインの岸辺を馬飼いの血で染めたあとには相応の返礼をしよう。わが友ブラン・アヴァンク=ルスはローハンのどの地方をお望みかな? いくさが終わるまでに決めておかれるがよろしかろう』と」

ガルトレヴ館の褐色人たちは歓声をあげ、その夜は皆で踊り明かしました。わたしは北のルダウアの出なのでフォルゴイルに恨みはありません。でもブランは本当に嬉しそうで、それでわたしは幸せでした。

ローハン戦役に出る
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翌年(11366年)のネーニエ月、イセンガルド=ドゥンランド連合軍22000はローハン領の奥深くまで進軍しました。そしてエント浅瀬にて、敵の大将西エムネトのグリムボルド率いるローハン軍主力12000とぶつかりあったのです。

大変激しい戦いだったと聞いています。
そしてわたしたちは——勝ちました!

命乞いするフォルゴイルたちに褐色人の斧が振り下ろされました。1人も容赦されませんでした。人も馬も湿地に重なって横たわりました。エント川が赤く染まるほどに。

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 野伏参戦
 アラゴルンの隣にいる不穏なキャラクターに注目

しかし北からよくない知らせが届きます。
北の野伏たちがローハン側について参戦、サルバドで灰色川を渡ったというのです。

野伏はブリー郷の向こう、風見が丘に住む荒野の戦士たちです。
首領の馳夫はしばしばルダウアへやって来るのでわたしは顔を知っていました。彼は歳のわからない、気難しい感じの男でした。神秘的な魅力があったので、わたしたちルダウアの娘は彼の訪問を心待ちにしたものです。

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 対ローハン戦は戦勝95%と終結目前
 しかし野伏が灰色川南岸のドゥンランド領を攻略し始めた

野伏たちはサルバドの渡しを確保していいます。ここは南北街道と灰色川が交差するエリアドールの要地。かつて河口のロンド・ダイアとともにヌーメノールびとの交易地として栄えたといいます。

河口を除けば灰色川はサルバドでしか渡れませぬ。大きな船が遡行できるのもサルバドまで。野伏の軍勢は少数ですが、彼らはこうした地の利を活かして褐色人の入植地を荒し回りました。

03
ウリメ月を過ぎたころ、南のガルスフェルドで大きな合戦があったという知らせがガルトレヴに届きました。

ああ……悪夢としか思えぬ知らせでした。
イセンガルド=ドゥンランド連合軍14000が跡形もなく消え去ったのです。

逃げ帰った者たちはみな気が違っておりました。
「森が攻めてきた。森が攻めてきた」と小声で繰りごとを言う者、「人が木々に喰われるのを見た」と言う者、ただ黙って震えておる者。

イセンガルド筋によれば、ガルスフェルドで我が軍を打ち破ったのはたった1700の敵でした。でもエダインの1700人ではありません。
それは『生きている森』ファンゴルンだったのです。

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 少数のエントと多くのフオルンで構成された『生きている森』は
 イセンガルドの軍勢と褐色人の戦士たちを貪り食った

この負け戦の知らせはとてつもない恐怖をわたしたちに与えました。
なにしろ動くはずのない森が動き、人間に悪意をもって復讐したのですから。

しばらくして、わが夫ブランも褐色人の戦士たちに守られて館へ帰還しました。彼はいくさの事を語りたがりませんでした。それでもぽつぽつと話をするようになりました。

「アウスラ、俺は恐るべきものを見た」
「人を喰う木々のことでしょうか」
「違う! それも見たが、俺がほんとうに恐怖と恥辱に震えたのは別のものだ」
「……お話しください、わが君」

12
 イセンガルドのウルク=ハイ・オーク、ウグルク

「オークだ。日の光のもとで戦うオークだ。ルダウアでも、モリアでも、俺はそんなものを見たことがない。それがあの戦場にいた。友軍としてな。
サルマンが作ったのだ。あのオルサンク要塞の地下で。ふつうのオークと人間とをかけあわせて」

夫の声は震えておりました。 
わたしは無言でした。いったい何が言えたでしょう。

「わからぬか。サルマンは褐色人の男女とオークをかけあわせて、あの半オークどもを殖やしたのだ! 俺たちの一族を、同胞を、忌まわしき魔術の材料に使ったのだぞ!」

ブランはその後、サルマンとの協力から一切手を引くよう褐色人の族長たちに命じました。援軍を失い、物資の供給を断たれたイセンガルド軍は翌年ローハンから撤退しました。

59
こうして白の賢者サルマンのローハン戦役は失敗に終わったのです。

世継ぎ産まれる

02
 11367年、灰色川河口の褐色人氏族を服属させる

同年ヤヴァンニエ月、ブランが以前から進めていたカラス領攻略が終わりました。開拓を進めてきた灰色川南岸と合わせ、エネドワイス28領のうち過半にあたる15領を確保したことになります。

しかしガルトレヴ館には王位を宣言するだけの富の裏付けがありません。隊商をあちこちに送り出したあと、お金が貯まるのをじっくり待つことになりました。

48
そんなある日、わたしはブランに詰問されました。
「アウスラ、最近そなたは俺との同衾を避けておるな。まじない師とよく2人でいるそうではないか。どういうことか。不義とあらば、そなたを北の故郷に帰さなくてはならぬ」

わたしは笑ってブランの誤解を解きました。
まじない師というのはロンド=ダイアから来た呪医でした。この夏、わたしはブランの子を身ごもったのです。

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わたしたちの初子は翌年の春に生まれ、アヴァンク=ルス家の祖母にちなんでプラウストと名付けられました。ブランは彼女をとても可愛がりました。ガルトレヴの人々は彼女に『小さな川鱒』というあだ名をつけて慈しみました。

名称未設定3
その3年後、わたしは長男ヤントを産みました。とても元気な子で、顔はもう父親にそっくりです。

ドゥンランド領を継ぐべき男子の誕生に、ルダウア、ブリー郷、灰色川流域、イセン流域の同胞から祝いの使節が訪れました。しかしかつての同盟者である隣人サルマンは沈黙を守ったままでした。

わが父ヴァイニウスも孫たちの顔を見るためガルトレヴへ来ました。
彼はルダウアのさまざまな消息を語ってくれましたが、中にはあの野伏の首領、馳夫についての話もありました。

21
 アラソルンの息子アラゴルン
 顔の左上の地図は旅の途上にあることを示す


馳夫は風見が丘を留守にして長い旅に出たそうです。
ルダウアに近い裂け谷に入り、そこを旅立ったのを目撃されています。見事な腕輪と鍛え直した名剣を持っていたとのことです。

そして馳夫の旅にはホビットたちが同行していたそうです。
サルマンが恐れていた『白の会議』が動き始めたのでしょうか。

サルマン復讐す
ヤントを産んだ年の夏、国境からの急使がガルトレヴに到着しました。族長コルマックは顔を真っ赤にしてブランに訴えます。
02
 タロルガンの族長コルマック・ヘボグ=ルス
 ドゥンランドとイセンガルドの国境を預かる


「大変ですぞ! サルマンのやつ、傭兵やならず者、流れオークどもをイセンガルドに集めている。標的はフォルゴイルじゃない。サルマンが狙っているのは俺たちだ!」

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 11370年スーリメ月、サルマンはドゥンランド侵攻を準備し始めた

「臣従を目的とした服属戦争じゃない。正面からの侵略だ。もし負ければ俺たちはすべての領土を失い、褐色人の国はサルマンの私領となってしまう!」

予想してしかるべき事態でした。
あのサルマンがローハン戦役での裏切りを許しておくはずがなかったのです。しかし、こうも性急に事を起こすとは。もしかすると『白の会議』の打った手がサルマンを焦らせているのかも知れません。
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イセンガルドにおいた間諜によると、終結後の敵兵力は20000超の見込みです。そして我々褐色人の兵力は2000、同盟を計算に入れたとしても5000を超えることはありますまい。とうてい勝てるいくさではありませぬ。

しかしそれでも、わたしたちは生き残らねばなりませんでした。
何としてでも。

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