Unhistory Channel 152 - パラドゲー記録

Paradox Interactive, Crusaderkings3, AAR

OIG (1)
 騎士になるためには厳しい訓練が必要だ 
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 エマヌエル・デ・ニーサ
 まだ若いサラゴサ王

サラゴサのアルハフェリーア宮殿の中庭で二人の人間が剣の練習をしている。片方はまだ少年で、もう片方は大人だ。後者は練習にもかかわらず鉄の兜をかぶっている。

「エマヌエル、攻撃を受けたらすぐにリポストしろ。防御からリポストへの時間がかかりすぎている」
「これ以上速くは無理だよ」
「時間は基礎練習で短縮できる。おまえは単純に基礎練習が足りないんだ」
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 鉄仮面のジュリアン
 護衛役、従兄弟でエマヌエルの姉ギゴーネの夫
 理由はわからないが人前で兜を脱ぐことはなかった

ジュリアンの指導は厳しかった。
エマヌエルはへとへとになって、しゃがみこんで言った。
「ジュリアン、僕は王であって騎士じゃない。いい武具も持ってる。そこまでして剣技を身につけなくても——」
「甘ったれるな。王たるもの、騎士の第一人者として敵陣へ切り込むこともあろう。そのとき血を流すより、いま汗を流せ!」
「……それもそうだね。ジュリアン、いつか僕が勝ちいくさを収めたら、誰よりも先に君に領地をあげるよ」
「それは嬉しいな。だがまだおまえはいくさに出られる強さではない。もう一度、はじめから」
二人は立ち上がり、また剣先を合わせた。
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主の1261年、ヒスパニアの3国はクルトゥバ協約のもとで長い平和を謳歌していた。男たちは戦場へおもむかず、女たちは夫の死を嘆かず、子供たちはすくすくと育った。婚姻のつながりが蜘蛛の巣のごとくヒスパニアを覆い、平和のいしずえとなっていた。

エマヌエルの母グニマはアル=アンダルスのアミール、アジーズ・イブン・サニョの妹だったし、姉エリサベタはアジーズの妃となった。そのエリサベタがお産で死亡すると、妹マッキヤがアジーズのもとへ輿入れした。さらに弟サヴァリクスが、アジーズの妹、バハク・ビント・サニョをめとることになっている。

だが数代にわたる結婚でデ・ニーサ家とングン家の血が濃くなりすぎたのも事実。そこでエマヌエル自身の妃はヒスパニアの外から招くことになった。ブルゴーニュ公アントワーヌ3世の娘、ジュリアンヌである。
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この婚約はカロリング家の諸王を警戒させた。
というのも、サラゴサがフランスに手をつっこもうとする前兆とみなされたからである。彼らの危惧には理由があった。ヒスパニアが協約によって平和になったということは、今後サラゴサの進出する方面がフランスしか残されていないということになる。
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西フランク王オンフロワは明確にサラゴサ王エマヌエルを将来の敵とみなした。一方、アキテーヌ王エンリコは900リーヴルで10年の和平を買おうとした。
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 オンフロワの個人戦闘力は50
 戦えば負ける

エマヌエルはオンフロワに侮辱詩を送り、彼との対立の火を煽った。二人は生涯を通じての敵となった。その後オンフロワはエマヌエルに決闘を申し込むが、エマヌエルは断った。オンフロワの剣技はきわめて強く、戦えばかならず負けることを知っていたからである。
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 ジュリアンヌ・ド・ピエモン
 サラゴサ王妃
 親が分家を作ったので家名がピエモンに変わっている

ジュリアンヌとの結婚式はサラゴサで盛大に祝われた。
エマヌエルは人付き合いを苦にしない性格だったので、新婦とも新婦の父とも会話が弾んだ。うまくやってゆくことができそうだ。
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アラルコスからやってきたアル=アンダルスのアミール、アジーズ・イブン・サニョとは宴を通じてよき友人になった。友情は同盟の基礎となる要素だ。一朝ことあらば互いを助けると二人は誓い合った。
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主の1270年、尚書長のヤアファルがエマヌエルにある提案をした。
「バルセロナを攻めませんか」
「バルセロナはアキテーヌ王のものだが」
「いま、バルセロナ公ラドミルは不品行を犯し、教皇の不興を買っています。この機会ならバルセロナ公領を攻める名分が得られます」
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「どう思う、ジュリアン」
王国のマレシャルとなっていたジュリアンはしばらく沈黙していたが、鉄兜の中からこう答えた。
「歴史をひもとけば、バルセロナはバルセロナ家のものだった。かのカール大帝が彼らのヒスパニア辺境における地位を認めていた。しかし200年前にアキテーヌ王家がバルセロナ家を追い出し、東欧からきた騎士に当地を与えた」
「気の遠くなるような昔の話だ」
「そしてバルセロナ家は衰亡した。だがバルセロナ家の血はわれらデ・ニーサ家にも色濃く流れている。したがって——」
「デ・ニーサ家がバルセロナ公領を要求するのになんの不都合もない」
「その通り」
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教皇ヴィクトル2世はエマヌエルの要求を認めた。
『しかしそれには条件がある』と書状に書いてあった。
『私はガリシアに対する十字軍を考えている。バルセロナ公領の代償として、十字軍へのサラゴサの参加を求めたい』
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ともあれ、これで条件はそろった。
クルトゥバ協約を発動させ、アル=アンダルスとシェンシルの援軍を要請する。敵はアキテーヌ王エイレナイオス!
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バルセロナは連日の砲撃にさらされた。
砲撃? そう、エマヌエルはここに西欧で初の火砲隊を投入したのだ。このサラセンの技術を導入した新兵器は恐るべき轟音を立てて火を吹いた。それは城壁を揺るがし、塔の基部を粉砕した。
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主の1272年秋、こうしてバルセロナは陥落した。
同年中にクルトゥバ協約軍はアキテーヌ王軍主力を撃滅し、エマヌエルは初陣を勝利で飾った。

サラゴサ王がサラセン人と組んで、カール大帝が設置して以来一度も侵されたことのないヒスパニア辺境を攻め滅ぼしたという知らせが各国の宮廷を駆け巡った。

「サラゴサ王はサラセン人と通婚を繰り返している。もはや彼ら自身、サラセン人のようなものだ。信用に値しない」
知らせを聞いた中にはそう言う者もいたという。
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 「約束のガリシア十字軍のことだが……」

教皇ヴィクトル2世の催促にエマヌエルは言葉を濁しているようだ。もちろんエマヌエルに十字軍に参加する気はさらさらなかった。クルトゥバ協約を根本から崩すことになるからだ。どうやって断るか、そればかりを考えているうちに、十字軍は始まり、知らぬ間に終わっていた。
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 1272-1273、失敗に終わったガリシア十字軍
 当然参加はしないが、仕組み上ムスリム側に立って参戦することもできず
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 ノルウェー出身の大司教ラグナル

「アキテーヌを続けて攻めようと思う。大司教はどう思われるか」
「名分がありません」
「デ・ニーサ家は何人ものアキテーヌ王女を妃として迎えてきたのだが」
「その言い分なら全世界を征服できますな。だがよろしい、その線で古文書を『調査』してみましょう」
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主の1277年、適当な文書が『発見』され、エマヌエルはラングドック公領の請求権を得るに至った。

エマヌエル率いるクルトゥバ協約軍35000はボルドー近郊のフロンサックでアキテーヌ軍30000と衝突。これを撃破したが、直後にアキテーヌ王エイレナイオスはドイツ王マルティン2世を同盟に引きいれた。まもなくドイツ王軍90000が南下してくるという。
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 アキテーヌとドイツの同盟!

エマヌエルは鉄仮面のジュリアンを呼び、意見を聞いた。
「白紙和平すべきだ」
「やはりそう思うか」
「ドイツ王相手はさすがに分が悪い」
「だが占領地の地積はこちらが圧倒的に稼いでいる。決戦で勝って時間を稼げないか」
「せいぜい決戦1回だな。それくらいは暴れてみせるが、時間とともにこちらの主力がすり潰され不利になるだろう」
「わかった。ではやってくれ」

ドイツ王軍は3隊に分かれてラングドックへと南下してきている。最初の部隊を叩きのめすことができれば、後続の部隊が加わっても個別に撃破できるだろう。速度が武器だ。
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 1279年6月2日、アルビの決戦

両軍はアルビで激突した。
サラセンの偃月刀が太陽にきらめき、ドイツの騎士たちの鎖帷子は血に濡れた。90000のクルトゥバ協約軍のうち20000が倒れ、一方ドイツ軍は6700人の死者を出すにとどまった。しかしいくさは協約軍の勝利に終わった。ドイツ軍は再編成のため北へと撤退していった。

主の1280年、エイレナイオスは降伏し、エマヌエルは勝利した。いまやラングドックはわがものだ。
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このいくさで大きくアキテーヌの領地を削ることができた。
しかしアキテーヌ王エイレナイオスとドイツ王マルティンの同盟があるので、今後はそうはいかない。この同盟をなんとかして無効化できないだろうか?
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 ウエスカ伯タリャ
 古いモサラベの家系
 都市育ちで家令向きだが、尚書長をやっている

「可能です」と尚書長タリャは言った。
「陛下の長男ヴェジアンの妃として、ドイツ王の娘か孫娘を迎えればよい。いくさになってドイツ王がどちらに援軍を出すかは賭けですが……」
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タリャの進言にしたがい、代替わりなったドイツ王イェンジェイの娘ズヴィニスラヴァを息子の嫁に迎えることになった。
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 「これからはお互いを友人と呼ぼう」

息子の結婚式でエマヌエルはイェンジェイと同じ卓で食事をし、友人となった。同盟の基礎は友情にある。
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結婚式が終わると、エマヌエルはすぐにアキテーヌ王国に宣戦した。ドイツ王イェンジェイがどう出るか? その結果によってはいくさをあきらめなくてはいけないだろう。
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そしてイェンジェイはこちらについた!
同盟軍の到着を待たずに仕掛けた緒戦で敗退するも、エマヌエルは最終的に主の1291年にガスコーニュを併合した。
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同年、アキテーヌ王エイレナイオスがトーナメントで事故死すると、すぐにその5歳の子ブラシに宣戦。鉄仮面のジュリアンが宮廷のあるビゴーレ領を攻めてブラシの身柄を確保した。こうしてガスコーニュに続けてトゥールーズ公領を併合することができた。
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ガスコーニュには次男のバルテレミを、トゥールーズには三男のペイレ=アルナウトを配した。二人ともまだ子供だ。
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 ギゴーネ・デ・ニーサ
 エマヌエルの姉で友人
 鉄仮面のジュリアンの妻

「エマヌエル! まだ小さな子供に領地を与えておいて、うちのひとにはなんの恩賞もないというのはどういうわけ。あなたはジュリアンには幼いときから世話になっているでしょう?」
「たしかに……」
「次のいくさでは絶対にうちの人に領地をあげてちょうだい。わかったわね」

領地をもらえなかったのは長男のヴェジアンも同じだった。ヴェジアンはすでに騎士となっていたが、その臆病さから戦果をまだ上げていない。
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そのころエマヌエルは大金を投じてアル=アンダルスのアミール、アジーズ・イブン・サニョの息子ステンバノスをサラゴサに招いた。親同士が友人であるように、息子同士も友人になってくれればとの思いだった。

ヴェジアンと卓を囲んだステンバノスは彼に良い影響を与え、二人は友人となった。ヴェジアンは臆病さを克服したし、ステンバノスはサラゴサに花開く南ガスコンの文化に魅了された。

主の1295年、エマヌエルはアキテーヌ王を追い詰めにかかった。アキテーヌ公領、ポワトゥー公領、ビゴーレ伯領を一気に請求したのだ。そして今回も緒戦でブラシ王を確保し、講和に持ち込んだ。
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 1295年、ほぼアキテーヌの旧領を併合
 王位を簒奪されたブラシはヴレー伯となった

機が熟したと見たエマヌエルは、ボルドーにてアキテーヌ王位を宣言した。長らくカロリング家の分家が治めてきたアキテーヌはここにデ・ニーサ家のものとなった。

半分サラセン人の王家がアキテーヌを征服したことに人々は眉をひそめ、トゥール=ポアティエの戦い以来のことだとささやきあった。
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「長く待たせたが、アキテーヌ公領を任せたい。受けてくれるか」
鉄仮面のジュリアンにそう言うと、彼はうなずき、無言で兜を脱いだ。エマヌエルは彼の顔を初めて見た。鉄仮面の下の顔はすでに老いていた。その目には涙が浮かんでいた。二人は笑い、抱擁し、お互いの背中を叩き合った。
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 アキテーヌ王家が持っていた東方の聖槍アラムを手にいれた
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 充実する書庫
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翌年、エマヌエルは旧アキテーヌ王臣と旧王ブラシをそれぞれ臣従させ、アキテーヌ王国を完全に併合した。彼は諸侯にはかって法律を変更し、長子相続制にしてサラゴサ王位とアキテーヌ王位が分裂しないようにした。
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その頃サラゴサの宮廷では天然痘が流行り、妃ジュリアンヌ、息子ジョルジェ、鉄仮面のジュリアンを含む多くの人々が病に倒れた。
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エマヌエル自身は天然痘にはかからなかったが、老いによる衰弱を感じていた。しとはいっても、彼はまだ50歳だったのだが。

友人のアティッシ・イブン・ズラール、アジーズ・イブン・サニョも次々と亡くなった。そして甥のステンバノスがアル=アンダルスのアミールとなった。
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 同盟国同士のいくさはやめてほしい

ステンバノスはアミールに即位すると、イシビリヤー領を巡ってシェンシルといくさを始めた。彼の軽率な行動によっていまやクルトゥバ協約は危機に瀕している。

だが、しだいにエマヌエルは込み入ったことを考えることができなくなっていった。判断力が落ちてきたのを感じる。
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「そして鉄仮面のジュリアンはこう言ったんだ。おまえには基礎練習が足りていないとね」
「お父様、若き日の訓練のお話でしょ? そのお話はもう何度も聞きました。ぼけがひどくなってきたんじゃないの?」
娘のジュリアナにそう言われて、エマヌエルは困惑した。
「そうだったかな?」
 
いや、かすかに覚えている。前に何度もこの話をしている。だがそれを認めたくはなかったのでエマヌエルはこう言った。
「では別の話をしよう。俺の若いころ、鉄仮面のジュリアンという男がいて——」
OIG.cW
 エマヌエル・デ・ニーサ(1246-1313)
 サラゴサおよびアキテーヌ王
 勇敢に戦い、王国をひとつ勝ち取った

OIG.L
 聖書を読むサヴァリクス
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 サヴァリクス・デ・ニーサ
 ターバンを巻いたサラゴサ王

『アッラーは偉大なり アッラーは偉大なり
アッラーは偉大なり アッラーは偉大なり
アッラーのほかに神なし アッラーのほかに神なし
ムハンマドは神の使徒なり ムハンマドは神の使徒なり』

サヴァリクスは聖書を閉じると、聞こえてくるアザーンの響きに耳をすませた。サラゴサのアルハフェリーア宮殿には妃のグニマをはじめ、サラセン人が多く住んでいる。ここでは日に5回、その礼拝の知らせを朗誦することが認められているのだった。
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 グニマ・ビント・ヤアファル
 アル=アンダルスの姫君
 妃たるものの模範

妃のグニマがサラゴサに輿入れしてきてから13年になる。
彼女はときおり神がかりの発作を起こしたが、その他はよき妻、よき妃としてサヴァリクスとともに歩んできた。

グニマはサラゴサ王国のサラセン人の代表者であり、父ヤアファル・イブン・ザカリーヤと夫をつなぐ人物でもあった。サヴァリクスがヤアファルとの関係に悩むことがあればかならず相談に乗った。
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 1240年のヒスパニア
 アル=アンダルス、シェンシルのアミールそれぞれと同盟
 イベリアの闘争の終了条件のひとつである
 "Alliance with every independent Involved character"
 を達成している

サラゴサ、アル=アンダルス、シェンシル。
いまやヒスパニアにはこの3国しか存在しない。つまらぬ小競り合いを除いてこの3国間でのいくさは絶えてなく、当地には長い平和が続いていた。
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 イベリアの闘争を終わらせるチャンス
 終了条件のひとつ、調停期Conciliation phaseの到来を待つ
 現在は敵対期Hostility phaseになる見込みのほうが高い

「サラセン人の侵入以来、長きにわたった戦乱時代を終わらせるときがきたのではないか」
サヴァリクスはひそかな野望を抱いていた。
「そして、それを終わらせるのは余だ」
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 カスティーリャ公ウーゲス
 王国のマレシャル
 「王など貴族の中の第一人者にすぎぬ。レオンやアストゥリアスといった歴史ある王位にくらべ、サラゴサの王位にどれだけの裏付けがあるというのか?」
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 王国の半分はカスティーリャ公のもの

一方、国内でサヴァリクスが警戒していたのはガルガメル系分家のカスティーリャ公ウーゲスだった。彼は広大な公領を相続し、1万に近い軍勢を招集できる。さらなる警戒が必要だ……。
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 義父ヤアファルについてベルベル語を習得

サヴァリクスは王国の諸民族の融和をめざし、自分でも多くの言語を習得した。彼は母語のオック語のほかに、オイル語、カスティーリャ語、アラビア語、ベルベル語、高地ドイツ語、ギリシャ語を話せたという。
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サヴァリクスには男子がなく、娘ばかりだった。
だが主の1246年、グニマは初の男子を産んだ。彼はエマヌエルと名付けられた。「神はわれらとともに」の意である。

グニマはその後、毎年のように子を成した。アルハフェリーア宮殿は幼な子の声であふれ、人々の顔をほころばせた。
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 サニョ・イブン・ヤアファル
 アル=アンダルスの新アミール
 その妃はサヴァリクスの叔母フランセサ

同年、義父ヤアファルが死ぬと、その長男サニョがアル=アンダルスを継いだ。彼はサヴァリクスの妃グニマの兄だ。したがってサラゴサとアル=アンダルスの同盟は継続された。
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 アフラガ伯ザバン
 有能なモサラベの家令

ある日、家令のザバンがサヴァリクスに言った。
「戦乱の時代を終わらせたい——とお聞きしました」
「その通りだ」
「いまでも平和は保たれておりますが」
「さらなる平和だ。ヒスパニアをひとつの家となし、争いをなくしたい。外から攻撃があれば、宗教に関係なくひとつにまとまって防衛できるような、そういう協約を結びたいのだ」
「なるほど。敵対期と和平期がくりかえされる現状を終わらせ、おっしゃるような協約を作るためには必要なことがあります」
「なんだろうか」
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「まずは同盟です。さいわい陛下はアル=アンダルスともシェンシルとも同盟を結んでおられる」
「そうだな」
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「次に、陛下自身が偉大な人物となられることです。偉大な人物のみが時代を変えることができるのですから」
「たしかに」
OIGのコピー3
「最後に、アミールたちを調停し、新時代がきたと納得させる必要があります。陛下はアミールたちと同盟は結んでおられますが、個人的な友情というところまではいかぬご様子。まずはアミールたちと親しく交流をなさってみては?」
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ちょうどそこへ、同盟国シェンシルのアミール、ズラール・イブン・アティッシがサラゴサを訪ねてきた。ズラールはサヴァリクスの話を聞くと、しばらく沈黙してからこう言った。
 
「実は私も同じことを考えていたのだ。だが実現させるには最大の国アル=アンダルスを巻き込む必要があるぞ」
「そうだな」
「さいわい君はサニョの義弟だ。やり方はいくらでもあるだろう。私も口添えをしよう」
「感謝する」
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友人ズラールの助けによってアル=アンダルスのアミール、サニョとの友人関係は進展した。だがサニョを説得し、協約を結ぶところまではいかなかった。

サニョは武力によるヒスパニア統一を考えているのだろうか? 彼にとってはサラゴサもシェンシルも餌食にすぎないのだろうか? いくら考えてもわかるはずのない疑問にサヴァリクスは悩まされていた。
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 いまだ敵対期に移行する可能性のほうが大きい
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主の1250年の復活節、サヴァリクスは大金を費やしてサラゴサでトーナメントを開催した。種目は歌唱、競馬、チェス、ジョスト。彼はいずれの競技にも参加しなかったが、主催者として絶大な威信を獲得した。
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 名声レベルExalted Among Men達成
 これであとは調停期になるのを待つだけ
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だがトーナメントの終わりごろ、サヴァリクスは主催者席で倒れた。侍医のゼッフンは言った。
「黒胆汁の過剰が見られます。いますぐに危険があるわけではない。だが寿命はあと10年というところでしょうな」

宮殿から離れることができなくなり、もう狩りに行くこともできない。いや、そんなことはどうでもいい。同盟、時期、威信がそろうのはそうそうないことだ。なんとかして自分の代で大協約を結び、ヒスパニアの戦乱時代に決着をつけたい。
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 ズラールと親友に
 調停期へ10ポイント前進

ズラールは折にふれてサラゴサを訪れ、遠出のできなくなったサヴァリクスを見舞ってくれた。これほどの友情があるだろうか?
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 調停期へ逆転
 贈り物(3ポイント)や都市開発(3ポイント)を地道にこなすことで敵対期に対して大きくリードした
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 このころサニョの長男アジズとサヴァリクスの次女エリサベタ婚約
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だがサヴァリクスの体調は悪化の一途をたどっていた。黒胆汁の過剰は進み、彼はふさぎこみがちな日々を送った。
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父の残した医学書や侍医ゼッフンの処方によってなんとか小康状態を保っているが、それもいつ崩れるかわからない。この命よ、せめて事を成すまでは保ってくれ!

サヴァリクスの容体については厳重に秘されていたが、人の口に戸は立てられぬもの、いつしかみなが知るところとなってしまった。人々はサヴァリクスを『虚弱王』と呼びはじめたのだ。
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 「ここから出してくれ! 頼む!」

そのころ、王妃グニマの暗殺計画が発覚し、計画に加わっていたカスティーリャ公ウーゲスが逮捕されるという事件があった。

ウーゲスといえば王をもしのぐ大領の主だ。この機会に領地を剥奪するべきだったが、大協約を生きるうちに結べるかどうかのサヴァリクスはそこまでの余裕がなく、彼を牢内に放置していた。彼はその後、縁者の助けで牢獄を脱出した。もったいないことをしたものだ。
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 1256年、調停期まであと少し
 敵対期に対して150のリードを保っている
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主の1257年、サヴァリクスは再び倒れた。
昏睡状態に陥った彼はしばらくして目を覚ましたが、今度はもはや寝床から離れることはできなくなっていた。
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以後、妃のグニマが摂政となり、まつりごとを執り行なった。協約の件も彼女が引き継いだ。彼女はシェンシルのアミール、ズラールとともに自分の兄サニョを説得した。

「お兄様。この協約に参加してください。夫が生涯をかけて成そうとしたこの大協約に」
しかしサニョの反応は鈍く、返事はなかなか来なかった。
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死ぬのが早いか、協約が成るのが早いか。
そして、その賭けは——。
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成功した!
サニョは協約に参加すると返事をよこしてきた。グニマは夫にその知らせを持ち来った。

サヴァリクスはもうほとんど朦朧となった意識の中で妃の言葉を聞いたが、それほど大事なことのようには思えなかった。彼はただ眠たかった。
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 イベリアの闘争、終結

主の1257年、イード・アル=アドハーの大祭の始まりに2人のアミールと1人の摂政がクルトゥバに集まり、サラゴサ、アル=アンダルス、シェンシルの3国が『クルトゥバ協約』を締結することを宣言した。

こうしてヒスパニアの闘争の時代は終わりを告げた。
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人々はこのことを喜び、前の不名誉な二つ名を忘れてサヴァリクスを『調停者』と呼んだ。だが本人はもうなにもできないし、そのことを知ることはなかった。
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それからまもなくしてサヴァリクスは死んだ。
司教オドンは彼の葬儀で聖書の一節を引いた。

『こうして彼らはそのつるぎを打ちかえて、すきとし、そのやりを打ちかえて、かまとし、国は国にむかってつるぎをあげず、彼らはもはや戦いのことを学ばない』
OIG (2)のコピー3
 サヴァリクス・デ・ニーサ(1200-1261)
 サラゴサ王
 諸王を調停し、ヒスパニアの闘争の時代を終わらせた

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