ときおりビャルトラの息子たちは冒険を求めて南へ行った。ある者はフランク人の国へゆき、ある者は帝国の沿岸を荒らし回った。
ビャルトラの船団は迅速に各地を略奪した
威信500(raise tribal army用)を貯めるまでは略奪行の連続だ
彼らは皇帝の金貨やサクソンの鎖帷子、ギリシアの乙女たちを船に乗せて帰ってきた。人々は息子たちのいさおしを讃え、谷には富が満ちた。そして帰ってこなかった者たちのためにルーン石碑が建てられた。
しかし……。
ある年の異変を境にビャルトラの生活は暗く厳しいものになる。冬がいっこうに明けないのだ。人々はトールの加護を失ったのではないかと不安になった。
その年、ビャルトラに春はなかった。
夏の太陽は白い小さな丸でしかなく、ライ麦は青いまま倒れ、鮭の群れは帰ってこなかった。ただ湿地の苔を食うトナカイだけが生き延びた。
次の年は夏すらなかった。
また次の年も。
谷は十尋もの雪に覆われていた。蓄えは尽きた。
ビャルトラのスヴェルケルは一族の者を呼び集め、こう言った。
移住者スヴェルケル、この物語の最初の人物
「俺たちは呪われた。もはや太陽は戻らない。斧の刃を研げ。矢尻をたくさん作れ。この地を捨てて旅立とう」
彼らには二つの行き先があった。
西と東である。
西の国、サクソン人やフランク人の住む海岸は豊かだった。白シャツのハルフダンや蛇目のシグルズ、骨なしイヴァルといった強力なヤルルたちがそこを荒し回っていた。
しかし、スヴェルケルの従者長であったダグはこう言った。
千里眼のダグ
その的確なアドバイスにスヴェルケルはしばしば助けられた
「すでに西の海岸はノルドの長い船で埋まっております。それだけでなく在地の王たちもまた強力です。新しく国を立ち上げるのはとても難しい」
「たしかに。俺も何度もフランク人に追撃され、危ない目にあった」
「それは、略奪品を少しでも多く取ろうと欲張るからですぞ!」
一方、東の国。
スラブ人の住む広大な森の国はガルダリキと呼ばれる。ガルダリキへは河を伝って行くことができる。ここにはすでにホルムガルズのレリクが王国を築いていた。
スラブ人の住む広大な森の国はガルダリキと呼ばれる。ガルダリキへは河を伝って行くことができる。ここにはすでにホルムガルズのレリクが王国を築いていた。
「東の国は開けたばかりで何をするにも自由です。ガルダリキの向こうには黒き海があり、そのまた向こうにはミクラガルズ(帝都)があります。富は東から溢れ出しています」
『ヴァリャーギからグレキへの道』の通航は最盛期を迎えつつあり、帝都ではノルド傭兵の雇用が始まっていた
スヴェルケルは言った。
「ガルダリキの南、ダンパル(ドニエプル)のほとりのコーヌガルズにはジーリ(en)がいるな」
「ガルダリキの南、ダンパル(ドニエプル)のほとりのコーヌガルズにはジーリ(en)がいるな」
ダグは暗誦するように答えた。
「『異邦人のジーリ』。ホルムガルズのレリクに派遣された軍将。しかしホルムガルズから自立して久しいとか」
「彼は彼で野望があるのだ。ときにコーヌガルズの国は立ち上げたばかりで戦士が足りない。俺はジーリに渡りをつけ、空いた土地に住まわせてもらうのがよいと思う。皆はどう思うか」
ビャルトラの男たちはこれまでに何度もダンパルを上下している。その途上、彼らの多くはジーリに会っていた。その記憶は良きものであったので、男たちは一斉に「ジーリ!」「ジーリ!」と叫んだ。
「これで決まったかな」
「ジーリが歓待してくれることを祈りましょう」
そのようなわけで、ビャルトラの船団はガルダリキに向けて出航することになった。
ビョルンの横槍
鉄人ビョルン、スヴィドヨッド王
「船を出すことはならぬ」
ウプサラの王ビョルンはそうスヴェルケルに言い渡した。
ウプランドに寄港した船団は何百ものスヴィドヨッドの戦士たちに取り囲まれている。スヴェルケルたちはまったく身動きが取れなくなってしまった。
「余はウプサラの王であるだけでなく、全スヴィドヨッドの王である。余の許しなくしてガルダリキへ船を出すことはならぬ」
「ビャルトラは自由の民だ。これまでどのような王にもひざまずいたことはない」
「では、ひざまずくのだ。今ここで」
外交で対ビョルン関係改善コマンドは打っていたが、
スウェーデン統一という王の意志を覆すのは無理だった
ほかにどうしようもない。
同じように征服され臣従したスヴィドヨッドの族長たちの前で、スヴェルケルは膝を屈しビョルンの足に接吻するしかなかった。
「しかし、もう我々はビャルトラには戻らない。ガルダリキへ行くと決めたのだ」
ビョルン王はスヴェルケルの言葉に冷たく答えた。
「では船を出すがよい。ただし我が臣下としてな。以後、貴様たちの住む場所はスヴィドヨッドの飛び地となり、貴様は余に貢ぎ物を送り続けるのだ。その条件でなら出航をゆるそう」
スヴェルケルはぎりぎりと歯を食い縛ったが、ようやく言葉を絞り出した。
「では、そのように」
「よかろう。ビャルトラの奉仕を受け入れよう」
このことがあって、スヴェルケルはビョルン王を激しく憎むようになった。
スヴィドヨッドの軍門に下る
コーヌガルズのジーリ
航海は再開された。バルト海から河をさかのぼり、「連水陸路」とよばれる道は船を牽いて越え、船団はダンパルの流れに入った。
森林に黒土の耕地が混ざり、村を見かけることも増え、ガルダリキの南部が豊かな国であることが誰の目にもわかる。
森林に黒土の耕地が混ざり、村を見かけることも増え、ガルダリキの南部が豊かな国であることが誰の目にもわかる。
(Алексей Федотович Максимов )
コーヌガルズは丘の上の大きな都だった。ノルドやスラブ、スオミの民が混じり合って住んでおり、ハザールやペチェネグといった東のカガン国の商人もいた。
「ようこそ、スヴェルケル。コーヌガルズは北の客人を歓待する」
コーヌガルズの支配者ジーリはパンと塩を差し出し、スヴェルケルはこれを取った。
「このたびは略奪行ではなく、移住の旅だと聞いた」
「そのとおりだ。どこかに我が民が落ち着けそうなところはないだろうか」
「そうは言ってもここにはすでにスラブの民が長く住んでおり、彼らはわたしの忠実な臣下なのだ。しかし、そうだな……」
少し考えた後で、ジーリは白樺の樹皮に描いた地図を持ってこさせた。
「ここからさらにダンパルを下っていく。マジャール人の平原を越え、黒き海に出る。ギリシア人の半島を回ってアゾフ海に入るとハザールの土地トムタラカニだ。ハザールはいまペチェネグと争っていて弱っている。ここならたやすく取れる」
「コーヌガルズからかなり離れている。それに馬飼いどもの真ん中ではないか」
「ビャルトラの民はスヴィドヨッド王の保護下にある。馬飼いもそうむやみにいくさをしかけはしないはずだ。それにほら、ここはダンパル、ドゥン、ヴォルガの三河川を扼する地点にある。この要地に友邦ができればうちとしても心強い」
「たしかに場所は悪くないが……」
強力な助っ人
「戦士長を貸そう。いずれも馬飼いとのいくさで鳴らした歴戦のつわものだ」
「しかし」
「気候も温暖だぞ。春はオレンジの花が咲き誇り、夏にはイチジクが実をつける」
「ううむ」
「『商売先』のミクラガルズにも近い。一衣帯水だ」
「よし決めた……!」
460人のビャルトラの戦士たちが斧をかついだ。
それに沼地に強いスオミの傭兵1400が加わった。
またスヴェルケルの『名誉ある呼集』に応えた各地の戦士が続々とコーヌガルズに集まってきた。これらスラブやリトヴィンの荒くれ者たちは2300名にまで膨れ上がり、スヴェルケル軍の中核を占めることになった。
新天地
「突撃! 突撃! トールの槌にかけて!」
スヴェルケルは大音声で呼ばわり、軍勢に命令を下した。
斧の刃が鈍くきらめく。払暁、スヴェルケル軍は吃水の浅い小舟で腐海を渡って、ハザール・カガンの宿営地に急襲をかけたのだ。
もやの中から現れたスラブの戦士たちを見て、ハザール兵は総崩れになった。アラン人弓騎兵が態勢を立て直し斉射を浴びせたものの、盾を並べた戦士たちは動じない。日が昇るにつれ、勝利はカガンの手からすりぬけていった。
こうしてスヴェルケルは見事にハザール領トムタラカニを奪取したのだ。
こうしてスヴェルケルは見事にハザール領トムタラカニを奪取したのだ。
戦略家として名を上げ、その武名はガルダリキに轟いた
「これよりこの地に館を築く。我らビャルトラの民の新しい故郷『タンタルキャ』だ」
さっそく大工や職人たちが集められ、宿営地には槌の音が満ちた。コーヌガルズに置いてきた妻子たちも呼び寄せられた。すべてが新しく始まり、人々は生き生きとした顔で働き始めた。
だがその年の夏、スヴェルケルは肺を病み、そのまま命を落とした。腐海の毒に蝕まれたのだった。まだ33歳だった。
スヴェルケルにはティケとアルフの2人の息子がいた。どちらもまだ子供だったが、人々は年長のティケが後を継ぐのにふさわしいと考え、これを推戴して族長とした。
次回、雷鳴のティケ
ノート
●分割相続、危機一髪
次男アルフは略奪してきたギリシア人妃の子。
新集落タンタルキャが完成していれば領地はティケとアルフに二分されたはずだが、まだ未完成なので領土分割をまぬがれた。
●移住予定地。
マジャールがハンガリーに定住することを前提にA地点への移住を考えていた。 A地点は交通の便もよく、コーヌガルズにも隣接し、またマジャール定住後は弱い族長しか配置されないので良い草刈り場だった。しかしHorse Lords DLCを導入後、マジャール固有の定住イベントがなくなり、遊牧民共通?の定住イベントを待つしかなくなった。そのためA地点への移住計画は放棄された。
A地点移住計画の残骸
ガルダリキのもうひとつの前線、ヴォルガ河上流部のB地点に移住する計画もあった。だがここには海港がない。したがって他に海港を持っていない場合、略奪行から帰ってきた船団が積荷をおろすことができない。海港を所有している場合でも、分割継承がデフォルトのノルドプレイではいつ海港を失うか予測がつかない。よってB地点への移住計画も放棄された。
C地点は「地の利」「海港の存在」「マジャールに比べれば相対的に弱いハザール」などの条件から割り出された折衷案である。
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