赤線内はいずれもgardenerの実績
レフィルはよき農芸家だった。
彼の庭には諸国の花が咲きみだれ、果樹園には葡萄や梨、マルメロや蜜柑がたわわに実をつけた。
次回、蒼白のスヴェルケル
レフィルは領国の富をすべて農地の開墾に費やした。いまやタンタルキャは穀物の輸出国だった。大麦と小麦が黒海を越えてミクラガルズへ運ばれた。商売は潤い、タンタルキャは黒海北岸の有力な交易都市としてギリシア人たちの注目を集めるようになっていた。
12~20程度だった直轄地年収は開発の結果47.7に
教会と都市は「徴兵なし、税最大」を選択している
古来の儀式も忘れない
改宗してもノルド文化ならルーン石碑を建てられるようだ
婚姻政策によって同盟者を増やす
僧籍に入った弟ホルムゲルは家令としてよく兄を支えた
またレフィルは姉妹をマジャル人大公に嫁がせ、ウングヴァル公、セーケリフェルド伯、ヴェンツェル傭兵団長がノルドの娘御を娶った。
レフィルの長女リキッサはアマルフィの商人貴族のもとへと旅立った。リキッサの輿入れのために少数のアマルフィ人がタンタルキャを訪れたことがあり、そのときレフィルはこの『商人の公国』の話を興味深く聞いた。
「タンタルキャにもアマルフィのような商人の公国を作れるだろうか?」
レフィルが最後にそう尋ねると、アマルフィ人は答えた。
「今は時期尚早でしょう。王に即位したら呼んでいただきたい。しっかりとギリシア式の商売を教えてさしあげます」
こうしてレフィルの心に「王位を得て海洋共和国をひらく」という目標が刻み込まれた。
アルメニア再興王ヴァガルシャク
一方、息子たちの妻にはアルメニアの王女が選ばれた。
レフィルはカガンの使節としてアルメニアを訪れたことがあり、そこで会ったヴァガルシャク王の人柄に感銘をうけたのだ。
アルメニア、ゲガルド修道院
レフィルはこの地で自らの信仰と向き合うことにもなった。
彼は幼少のころからイエズスの教えに帰依していたが、神の本性がどうとか位格がどうとかいう西方帝国の神官たちの言うことはどうも飲み込めなかった。
しかしアルメニア使徒教会の教えはすっと胸に入ってきた。「受肉したキリストは神でもあり人でもある」というのはいかにもわかりやすい。
西方教会に帰依するカガンの手前、レフィルはすぐに改宗することはなかった。しかしその教えは心に深く残ったという。こうしてレフィルの心に「合性論に改宗する」という2つ目の目標が刻み込まれた。
合性論の信仰される地域(黄色)
息子ダン、スヴェルケルをアルメニアへ留学させる
このようにレフィルは善い統治を敷き、民も彼を愛した。
思案のとき
しかし人々は言うだろう。
馬の民ペチェネグの血を引き、自身もすぐれた戦略家であるレフィルは、なぜ戦の庭ではなく内政を選んだのか? 領国を拡張しようという野望はないのか?
958年のガルダリキと周辺諸国
白はタウリカ王位の、青はアラニア王位のde jure
先に述べたようにレフィルは王位を望んでいた。
地理的な位置からタウリカかアラニアの王位ということになるが、王を号するにはそれぞれの領国の1/2を確保していなければならない。レフィルはタウリカの3/8を有しているので、あと2領必要だ。
しかしタウリカの残り5/8はマジャル・カガン国、グルジュ・カガン国(遊牧マジャル人)、ビザンツ帝国によって分割されていた。
カガン・コルネールの兵力
代を継いでもなぜかまったく減らないハンガリーのイベント兵
レフィルが仕えるカガンは兵力11000を誇り、また東方に控えるグルジュ・カガン国は兵力7000を数える。ビザンツについては考えるだに恐ろしい……。
いずれも領土を削り取ることのできる相手ではない。
タンタルキャに成長の余地はなかったのである。
レフィル自身は次のように考えていた。
「まずは今の技術水準で最大の収入を上げられるように領国に投資する。投資が頭打ちになったら、そこで初めて砦を増築し兵力を涵養する。兵力がある程度になったら……いずれかへ打って出る」
兵力の涵養には莫大な投資が必要だ。金を貯めて傭兵を使ったほうがいい場合もある。どのあたりが兵力増強のやめ時なのか、レフィル自身も確信が持てないでいたという。
静かな戦い
「宮廷にいては危険だ。砦から出ないほうがよい」
レフィルは妻アガフィヤに警護をつけ、二重の堀と木の柵で守られた砦に住まわせた。
彼女は青ざめた顔で身支度を終えると、侍女をつれて砦へ移った。すでに毒の杯で2人の味見役が命を落としていたのだ。
流れ矢、ありえない事故、行列に突進してくる暴れ馬……。
暗殺者はタンタルキャのあらゆる街角に出没するように思われた。
レフィルは拳を握りしめ、弟ホルムゲルを呼んだ。
「やはりグンナル叔父の手の者か」
ホルムゲルはうなずいた。
「商館を急襲したところ、グンナルの一党の刺青を入れた男が見つかりました。拷問の結果、北の商人団に紛れて新手を送ってきたことがわかりました」
父スヴェルケルの代からグンナルは暗殺者を送り込んできていた。レフィルやその縁者が死ねば、リフランドとタンタルキャの公位は彼のものになるからだ。
一時はカガンに王位を奪われ、北辺の島の公にまで成り下がったグンナルだが、現在は違う。カガン国内の派閥闘争を通してアールパード家の係累を退け、いまやルーシ王として返り咲いている。
派閥闘争と選挙法継承でルーシ国王に復帰したグンナル
執念を感じる
「またラーンマーの領主、アルフ系ビャルトラ家のトケですが、これを拘束しました。彼はグンナルの意に沿って動いていることを自白しました」
レフィルはトケを処刑するように命じ、かわりにクニトリング家のボトゥルフにリフランドの代官を任じた。彼は亡命デーン人だが信用のおける男だ。
「今回はよくやった。グンナルの手の者に引き続き注意せよ。それからカガンにこの書簡を渡してほしい」
レフィルはそうホルムゲルに言い渡した。
「いまや反撃のときだ。この書簡にはカガンがグンナルの所領を没収するよう請願を書いておいた。古い信仰を保ちつづけるグンナルはカガンの命令に従うか、あるいは反逆するかしかない。どちらにせよグンナルの勢力は削られる」
兄弟同士の憎しみが世代を越えて受け継がれる……。
数少ないガルダリキのノルド同士で命と所領を削りあう愚かさを思い、レフィルはひどく疲れたような気分になった。
その後、妻アガフィヤあえなく絶命(おそらく暗殺)
レフィルは声をあげて泣いたという
レフィルの作戦は功を奏した。
グンナルは所領を削られ、それからカガンに反逆した。
こうして960年には彼はガルダリキに一片の領土も持たない流れ者と化した。うわさではスヴィドヨッドで失意の死を迎えたという。ビャルトラ家同士の静かな戦いはこれにて幕を閉じるかと思われた。
ところが962年、グンナルの遺児ゲイルが6000の軍勢を率いてリフランドへ上陸してきたのだ!
いままさに上陸しようとするゲイル軍
いくつかの戦闘が行われ、レフィルはカガン軍の一将としてゲイルと戦った。ゲイルは負け、これを最後にグンナルの一党は完全にスヴィドヨッドへ引き上げることになった。
老境
レフィルは老境に達しつつあった。
ペチェネグのカガン・イルデイが戦に倒れ、ペチェネグのカガン位請求権が発生したときも、彼はこう言っただけだった。
母ギュネスがペチェネグの王女だったので
レフィルには「弱い」請求権があった
「あと20年若ければ軍勢を徴集して遠征していたかもしれぬ。だが今は……」
レフィルは次男のスヴェルケルを後継者とみていた。
スヴェルケルはアルメニアで使徒教会の教えを受けたが、帰国後は西方教会に改宗してしまった。レフィルは残念がったが、こればかりはしようがない。
カガンの主力、イベント兵6000の運用を常に任される
老いたとはいえ、レフィルはカガンの側近として常に従軍した。大平原に、カフカズのふもとに、プリピャチの湿原に決然と軍を進めた。その姿はいにしえの東方の馬王を思わせたという。
987年4月、平たい顔のレフィルは死んだ。
次男のスヴェルケルが後を継ぎ、タンタルキャのヤルルとなった。
次回、蒼白のスヴェルケル
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