2時航路
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ソ連邦科学アカデミーの科学者たちはディスプレイをじっと見つめている。若干のノイズの後、ガレンカ・オストロフスカヤ博士が画面に現れた。
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映像の中でオストロフスカヤ博士は証言する。
「わたしは艦橋にいて指揮を取っていました。プログレス2号はジュグラド星系に到着したばかりでした。船はソローキン航行後の放熱中で、準光速航行に移る前の機関チェックを行っていました。

そのときわたしの頭の中にひとつの声が生まれ、声は概念となって香油のごとく脳内を満たしたのです。それを言葉にするなら、こうです。

 『小さき者よ、聖域に汚れた足を踏み入れるな』
 
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わたしは知覚した。すべてを一度に。
ヴィドやプロジェクタを見るようにではなく、あるものがあるがままに知覚したんです」

「聞いてください、ほんとです! 彼らは鳥のような姿をしていた! 彼らがわたしに翼をさしのべあふれる光があふれる光があふれる光が
(この後、言語不明瞭)」

すべてが謎に包まれていた。
プログレス2号が地球に帰還したのち、乗組員たちはそれぞれにアカデミーの科学者からカウンセリングを受けた。彼らが聞いた『異言』を統合して解析し、その背景をプロファイルしたところ、声の主の素性がおぼろげにわかってきた。
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 いきなりのFallen Empire

彼らの名はウヴァ=サヴァニといった。
きわめて古く、強大な種族である可能性が高い。彼らは11の惑星を統べ、聖帝国の守護者を自称している。主惑星は『天上の王座』という大層な名前だ。

彼らは直接接触することなく人類の立ち入りを拒んだ。心的分野の研究と実践がきわめて発達しているものと見える。

そう、ウヴァ=サヴァニはあまりにも超然としていた。
通交も同盟も無言のうちに拒まれた。それで党もアカデミーも恐慌状態に陥った。すぐに彼らが攻めてくると誰もが恐れた。

ただ解析が進むにつれ、彼らは聖地を守っているだけで、こちらが余計なことをしなければ攻撃の意図はないらしい……ということがわかってきた。

「わたしはあれを『聖鳥文明』と呼ぶことにしよう」
と後にオストロフスカヤ博士は書いている。
「それにしても可笑しいではないか。ソ連邦人民が夢にまで見たファーストコンタクトの相手は、わたしたちを無視し続ける聖者の王国だったのだ」
50 のコピー
関係者全員に箝口令がしかれ、このファーストコンタクトは人民には秘密とされた。

ソ連邦よりずっと強大な勢力が存在することを隠したかった? それもあったかもしれない。しかし第一の理由は「ソ連邦が全く相手にされていない」という事実があまりにも都合が悪かったためである。
 
発展のソ連邦
一方、セルジオ・エルナンデスのプログレス号がもたらした可住惑星の報告はアルファケンタウリ計画を強く推し進めることになった。
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小惑星帯、木星系、天王星において急ピッチで鉱山開発が進められ、いまや太陽系は巨大な鉱工業コンビナートと化した。

ゴスプランの高官は言った。
「資源、資源、資源! 最初に足りなくなるのはいつでも資源なのだ」

アルファケンタウリ計画実現には莫大な資源が必要となる。資源は宇宙船建造だけでなく、それを支える採掘ステーションにも惑星施設にも使われる。

『第56次五カ年計画
 資源収支:+50ユニット超 2211年までに
 惑星植民:5惑星

というノルマが高々と掲げられたことが、この時期の雰囲気をよく表している。
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 全力で資源増産し、植民船を建造

2207年、恒星間植民船ミールが進水し、ついにアルファケンタウリ第3惑星に人民を送り込んだ。人々は固唾を飲んで、当地からの通信を待ち構えた。

「植民は成功した」

その一言は世界を駆け巡った。ついに人類は地球以外の惑星で生きていけることを証明したのだ。党の指導とアカデミーの叡智が成し遂げた偉業である。同星系は革命的勝利を記念して『レヴォリューツィヤ』と命名された。
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 祝 レヴォリューツィヤ植民成功
 緑の地球マークは可住惑星、白線は渦巻銀河の腕

このころ可住惑星はシリウス、メディア、ブリスコル、ドリア星系でも発見されていた。ソ連邦科学アカデミーは順次これらの星系に移民船を送り込むことを提言した。

さらなる可住惑星の探索が計画されたが、2時方向の銀河腕を聖鳥文明に封鎖されてしまったので、今後は8時方向を探索するしかない。

銀河系の内側の腕(4時方向)に進出するという野心的な案もあった。しかしソ連邦は腕と腕のあいだのヴォイド(空隙)を越える手段を持っていない。いまのところは夢物語だ……。
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2209年3月には生物科学研究所のジャナ・クァデリ博士が『社会主義前衛プログラム』を開発した。これは移民コスト減少と植民地惑星の人口増加をもたらす社会計画で、社会主義が宇宙開発にもっとも適したイデオロギーであることを立証するものである。
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 シリウスの青白い太陽のもと、オゴニョーク植民成功

2210年、2番目の恒星間植民船『パラドックス』がシリウスに到着した。あらたに『オゴニョーク(小さき炎)』と命名されたシリウス星系で、社会主義前衛プログラムがさっそく実働に入った。

すべては計画通りに進み、自発的植民者たちはコミッサールの監督下で建設労働に邁進した。これでソ連邦は地球、レヴォリューツィヤIII、オゴニョークIIIの3惑星を保有することになる。
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 オゴニョークVではまたも核の冬の痕跡を発見
 かつていかなる文明があったのだろうか……
名称未設定
ところが成果を上げたクァデリ博士は生物科学研究所の主任職をはずされ、ガレンカ・オストロフスカヤ博士がこのポストに返り咲いた。彼女は聖鳥文明を発見したことでアカデミーにおける影響力を増していたのである。
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クァデリ博士はメディア星系の有毒藻除去技術(黄)の研究を進めていたが、オストロフスカヤ博士はこの研究を打ち切り、自身の分野であるプロパガンダ研究(赤)にマンパワーを注ぎ込んだ。

「ワカメとソ連邦統一のどちらが大切か、考えるまでもないでしょ」

植民派科学者たちの反対は根強かった。だがオストロフスカヤ博士は頑として譲らなかった。彼女には内務省の後援があったと言われている。
 
ソ連邦宇宙軍の発足
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 2209年9月21日
 クラースナヤ・ズヴェズダーVの戦闘

このころ、人類初の宇宙戦闘が起きている。
クラースナヤ・ズヴェズダーの資源ステーションで反革命テロリストの蜂起があり、4隻の科学アカデミー警備艦がハイジャックされたのである。

続いて発生した数度の戦闘で警備艦隊は敗北。ソローキン航法で太陽系外縁まで追撃されるという醜態をさらした。最終的には増援によってテロリストを殲滅したが、戦力逐次投入の愚を犯したことで関係者は厳しく処罰された。

この事件のあと、例の聖鳥文明の件もあって、常設的な宇宙艦隊の必要性が叫ばれるようになった。海軍と戦略ロケット軍から半々の人員が供出され、すでにその年内にソ連邦宇宙軍が発足したというスピードは党の危機感の高さをうかがわせる。
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 ソ連邦宇宙軍の募兵ポスター

ただ号令は派手だったものの、宇宙軍はなかなか資源を割り当ててもらえなかった。とにかく植民船を量産するというアカデミーの方針が優先されたからである。そこでソ連邦宇宙軍はたった5隻の小型警備艦でしばらく我慢することになる。

8時航路
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 硬骨魚めいた未知の宇宙船

8時航路からも報告があった。ファブリツィオ・ガリバルディ博士率いるプログレス3号がもうひとつの文明とコンタクトを果たしたというのだ。
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 ファブリツィオ・ガリバルディ博士
 ナポリ大学で教鞭を取っていたがアカデミーに抜擢された
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「ファルギス星系でのコンタクト。彼らはみずからをトラクポシアンと呼んだ。羽のついた雄の蟻のような外見をしており、おおむねその文化も蟻に似ているようだ。ソビエト文明も1つの社会性昆虫のシステムだとみなしたのか、友好的といってよい態度を見せてくる」

ガリバルディ博士は彼らを簡潔に『蟻』と呼んでいる。
「蟻と交易を試みたが、53ユニットのヘリウム3に対する返礼はなかった。彼らが何を欲し、何を与えたいと思っているのかさっぱりわからない。これではまるで沈黙交易だ」
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 単にプレイヤーが貿易システムを理解していなかった
 左下のDEMANDタブで相手側に要求する品目を選べる
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 2時航路に続き、8時航路も封鎖されていることが判明

「2210年7月、プログレス3号は8時航路ティブリック星系にて再び蟻の探査船と遭遇した。渦巻銀河の腕がちょうど狭くなっている地点だ。この先は蟻の領域となる。どうやら、われわれはこの方面でも封鎖されてしまったようだ」

「ソ連邦は自らが拡張するために、いつかは蟻と戦火を交えなければならないだろう。しかしそれまでのあいだは蟻たちと共存する必要がある」
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「8時航路には2つの隘路がある。サパド星系とマツォニア星系だ。ここを先に押さえておくよう提言する。そうしなければ、すでに我々が探査した宙域に蟻が進出してくるかもしれない。特にマツォニアには可住惑星があるので、速やかにここへ植民船を送るべきだろう」

党指導部はこの報告に迅速に反応し、ただちにマツォニア星系への植民とサパド星系への哨戒ステーションの建設を命じた。
 
「この迅速ぶりに驚く必要はない」
とガリバルディは冗談めかして書いている。
「ソ連邦はその心性として『領土(あるいは領土予定地)を失うかもしれない』という恐怖に耐えることができないのだ」
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 宿願のPlanetary Unification完成
 サパドのoutpostにinfluence-1/月を食われるため
 この技術による+1/月はありがたい

あまりにも遠方での開発を懸念する声もあった。太陽系の周辺から地道に開発すべきだという慎重主義者は思ったよりも多かった。しかし、ちょうどオストロフスカヤ博士の新プロパガンダ手法が効果を上げ始めた時期であり、反対の声は巧妙に封殺された。
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ニュース映画:伸びゆくソ連邦
『宇宙植民計画のため、ソ連邦人民は完全に自発的な土曜労働をもって資源を増産し、ここに第56次五カ年計画のノルマ(資源収支+40、惑星植民2)は完全に達成された!』
名称未設定 のコピー
 極端に資源に振った生産体制で移民船を量産す

 
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2213年4月、3隻目の移民船がマツォニア星系に到達した。この星系はピオネール(先駆者)と改名され、8時航路の尖兵として開発が急がれることになった。
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さらに2214年にはノーヴォエ・ヴレーミヤIV(旧メディア星系)に、
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2215年にはコミュニズムIV(旧ドリア星系)に植民を敢行。

こうしてソ連邦は5つの内部星系、1つの哨戒ステーション、1つの外部惑星を有する一大星間国家となったのである。 
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 なぜか宇宙でも飛び地プレイになってしまう
 大領土に見えるが地球以外はPOP数5以下


次回、2213年:進歩、そして勝利