外交政策の転換
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ショータ・ヤマザキはプラウダ自治共和国の第一書記である。彼はある任務を帯びて駆逐艦チェリャビンスクに添乗している。目的地は統合ロレンドラ連邦の主星アギフェンドラだ。

ヤマザキは出発前の書記長の言葉を思い出していた。
「きわめて重要な任務だ」とガブリエラ・マルティン書記長は言った。「ソ連邦の未来は同志ヤマザキの肩にかかっている」と。
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 ガブリエラ・マルティン書記長

「同志ヤマザキ。ソ連邦はタラッシとの建艦競争に耐えることができなくなりつつある。無限に増えるエネルギー消費、開きつづける戦力ギャップ、総力戦への不安……我々は薄氷の上を歩んでいるも同然だ」 
「恐れていた事態です」
ヤマザキがそう答えると書記長はうなずいた。 
 
「党政治局はタラッシとの建艦競争について最終的な結論を導いた。『建艦をやめるか、破産するか』だ」
「建艦をやめればタラッシが突っ込んできます。それは先の戦役で証明済です」
「そうはさせない。外交政策の転換をやる」
「転換? 具体的には?」
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 ロレンドラとは良好な関係

『大協約』へ参加する。そのためにロレンドラと可能な限り関係を改善せよ。これが同志に与えられた任務だ」
「資本主義者どもと手を組むというのですか」
「さもなくば滅亡」
「我が国はそこまで追い詰められているのですか」
「そうだ。『大協約』参加の鍵となるのがロレンドラだ。連中のほしがるものはすべて与えろ。星図も独立保証も資源もエネルギーも全部だ」
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 大協約諸国、2265年
 緑:統合ロレンドラ連邦(🍄キノコ)
  小国だが同盟の要、外交がさかん
 赤:統合タラッシ盟約国(🐨コアラ)
  引き続きソ連邦を仮想敵指定
 灰:共和フェフォッサン領(🐔鳥)
  第3象限の大国 遠マティン宙域で接する
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 現在の同意可能性は-19 まだまだ足りない

だが交渉は長引いた。
持てる材料のすべてを駆使してもキノコたちは首を縦にふらなかった。ソ連邦のような大国を迎え入れて同盟内バランスが崩れることを恐れているのだろうか?
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 フェフォッサン、テゼキアン、ジャアジジャン
 第3象限は鳥だらけ

交渉中、ヤマザキはあることに気づいた。
それは「仮想敵指定」だ。

ロレンドラは第3象限のテゼキアンという国を仮想敵として指定している。これは同盟国のフェフォッサンがテゼキアンを仮想敵としていることによると思われる。つまり、同盟国は同じライバルを共有しているのだ。

ならば、ソ連邦もテゼキアンを脅威とみなし、ロレンドラに同調してみてはどうだろうか?
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 当たり 同意可能性+9

ヤマザキのもくろみは成功した。
キノコたちは胞子をまき散らし、対テゼキアン包囲網の構築に満足した様子を見せた。

しかし人類の大協約参加については即答を避けた。どうやらタラッシなどの同盟国が難渋しているらしい。一難去ってまた一難。これはかなりの長期戦になりそうだ。ヤマザキはタラッシの主星ロルデルを訪れ、交渉にあたることにした。
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2266年10月、ひたすら下手に出てさまざまな利権を約束した結果、タラッシはソ連邦に対する仮想敵指定を取り下げた。タラッシ人との交渉の過程はきわめて屈辱的だったが、人類にとって大きな外交上の勝利である。
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 タラッシとの関係は-40から一気にプラスに転じた
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 フェフォッサンの鳥人とも関係を構築

だが2270年、大協約諸国は第3象限においてテゼキアンに宣戦。外交チャンネルが閉じられたため、同盟参加工作は中止された。ヤマザキはプラウダ星系へ帰ってふたたび施政をおこなった。

この間、建艦競争が止まったわけではない。
同盟参加工作が失敗した場合に備え、ソ連邦の国力を超える規模の軍拡が続行されていた。「駆逐艦:コルベット=2:5」で構成されたソ連邦宇宙軍艦隊の艦隊総火力はこの時期6.6Kにまで及んでいる。
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 アトラーント級防護巡

ソ連邦は国産巡洋艦の開発にも成功した。第3世代反物質ミサイルP-3Mでそろえたアトラーント級防護巡洋艦の登場である。対タラッシに特化した形としてシールド被覆が厚く、その分非装甲部位が多い構成となっている。

アトラーント級の登場により、ソ連邦宇宙軍の戦闘艦艇は
・前方で乱戦を展開するミサイルコルベット・ミサイル駆逐艦
・戦列を作る防空駆逐艦
・中距離で確実な打撃を与えるシールド装備巡洋艦
の3系列に整理された。
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あわせてマクシム・ゴーリキー型の後継となるレーニン型防衛ステーションも開発された。反物質ミサイルP-3Lを4基装備し、ワープ阻害装置を有した要撃ステーションである。レーニン型は地球の周りに4つが建設されることとなった。

付)ソ連邦の選択:
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 植民地集権化で影響力+1か
 あるいは領土範囲+20%か
 聖鳥文明との国境紛争を恐れ、前者を選択した
 
大協約下のソ連邦
2278年、大協約諸国とテゼキアンとの戦争はフェフォッサンによる西部星系独立化で終了した。
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 各同盟国との関係+100超え

そして2279年10月、ショータ・ヤマザキはアギフェンドラ星系においてロレンドラ、タラッシ、フェフォッサンの代表者とともに加盟条約に調印。14年間の長い交渉を経て、ついにソ連邦は大協約に参加することとなった。
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 ソ連邦の加盟により大協約は第2、第3象限における大勢力となる
 hardモードでも工夫すれば同盟を結べることがわかった
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大協約加盟国はそれぞれの軍事力についての情報を共有している。しかしアギフェンドラ星系から送られてきた資料は、党政治局に一大ショックを引き起こしてしまった。
 
「なんだこの数字は!」
「17隻だと?! タラッシの軍艦はうちにくらべてまったく少ないじゃないか!」
「軍事力ギャップなんてものは幻想だったんだ……」
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 紛糾する党会議

そう、ソ連邦の艦船数はあからさまに突出していた。
同盟は必要なかったのでは?
独立したままタラッシを叩くことができたのでは?

ソ連邦たるものが同盟を乞わねばならない恥辱をさらしたことは、人々の誇りを傷つけていた。さらに、地球を占領したコアラに対する敵意がまだくすぶっていた。

「同盟をぬけてタラッシを叩こう」
同盟交渉に反対だった政治局員たちはひそかに同盟脱退について検討を始めた……。
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2280年6月、第3象限にて戦争が始まった。
ジャアジジャン星間共同体というまた別の鳥人との戦いだ。ソ連邦にとっては大協約参加国として、また象限を超えた最初の遠征となる。
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アギフェンドラ星系に集結した各国艦隊は壮観だった。
ロレンドラの艦隊は総火力4.8K。
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ソ連邦からは8.4K。
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衛星国の万国人類連合もソ連邦に協賛して艦隊を送ってきた。1.5K。なんと宇宙タコを運用している。
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 接舷停泊するタラッシ第1艦隊

しかし最大の勢力はタラッシだった。
総火力10.6Kの大艦隊を前にしてソ連邦の軍人たちは何も言えなかった。

しかもこれと同規模の艦隊がもうひとつあるというのだ。いつのまにこれほどまでに回復したのか。おそるべき建艦力だ。
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 タラッシのジャル・ヴィクリム級戦艦

タラッシの艦隊総火力はソ連邦の2倍。同じミサイル飽和攻撃ドクトリンだがミサイル兵装は3世代先、シールドは2世代先、機関も2世代先を行っている。

「タラッシと戦争しなくて本当によかった……」
その場に居合わせた軍人たちは誰もがそう思った。艦船数は少なくても、戦艦・巡洋艦の多さと技術で完全に負けていたのだ。

これ以降、「同盟を抜けてタラッシと戦おう」と主張する者はみな笑い者となった。
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 その後、ジャアジジャンとの間に激しい戦闘が繰り広げられたが、第3象限における限定戦争ということで地球ではあまり報道されなかった
 
自治共和国
2284年、万国人類同盟は平和裡にソ連邦に参加、ふたたび人類圏は統合された。これを機に自治星系の再編が行われ、3つの自治ソビエト社会主義共和国が誕生した。
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プラウダ自治ソビエト社会主義共和国(第2象限)
太陽系のすぐそばにある自治共和国で、第2期植民星系に相当する。プラウダ、トラークトル、イスクラ、ナロードなどの大陸型惑星で構成される。産業の盛んな太陽系後背地といえる。
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『冬』自治ソビエト社会主義共和国(第2象限)
惑星『冬』からこの名は来ているが、自治共和国の中心はトラクポシアン人(蟻人)のポベダ星系だ。のちに人類の住むピオネール星系を併合したものの、トラクポシアン人が過半数を占める民族共和国といえる。極寒の未開発惑星が多く、開発の前線。
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遠マティン自治ソビエト社会主義共和国(第3象限)
マティン帝国の遠方にある4つの星系。いずれの星系も開発中。周辺に未開の熱帯型惑星が4つ発見されており、さらなる発展が見込まれる。
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 テロリストどもめ!

一方、あらたにソ連邦に参加したレヴォリューツィヤ、オゴニョーク、ノーヴォエ・ヴレーミャでは反動分子による分離運動が勃発。報道管制を敷き、随時首謀者を摘発しているが、なかなか手ごわい。ソ連邦への一体感を醸成するプロパガンダが必要かもしれない。
 
アトミルの同胞たち
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「わたしはソ連邦科学アカデミーの生態学者チャン・パン。この報告はアトミル星系からプラウダ星系に送られたものである」
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「このアトミル星系には宇宙軍の監視哨が建てられている。というのも、アトミル星系と隣のドゥルタウリ星系は希少なベタリアン石を産するからだ。ここはタラッシの進出線上に近く、ソ連邦の権利を強く主張する必要があった」
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「この星系に海洋型惑星があり、知的生命体が生息していることはすでに70年前の初探査のときから知られていた。しかし我々は彼らをほうっておいた。星々の探検をするのに忙しく、足元の星系に住む未開種族に構う余裕がなかったのである」
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「しかしソ連邦が大協約世界の一員となり、平和が訪れたとき、我々は落ち着いて周囲を見渡すことができた。
『この星系はなんだ? なぜこんなに豊かな海洋惑星を放っておいたんだ?』
我々は自問し、そしてふたたび彼らに気づいた。カラクセナンという名の、目の飛び出した爬虫類たちに」

「我々には3つの選択肢があった。観察する。啓蒙する。併合する。我々は民族の自由な独立を愛するが、なにぶんこの星系は重要すぎた。そこでエージェントを送り込んで、彼らみずからソ連邦への参加を求めるよう『うながす』ことにした」

「カラクセナン人は人類でいえば20世紀の段階にあった。彼らは異星人の存在を仮定し、否定し、また夢見ていた。そこでソ連邦は彼らの憧れを最大限に利用した。さかんに未確認飛行物体を出し、連れ去った現地人の病気を治して地上に戻した。また有力な国家の政府機関にわたりをつけて便宜をはかった。懐疑的な科学者たちを始末する手伝いもした」
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 カラクセナン民族のソ連邦参加
 
「そしてついに2294年1月2日、公式のコンタクトが行われた。ソ連邦は温情ある星間国家として彼らの前に現れた。カラクセナンが自由な1民族としてソ連邦に参加し、平和と繁栄を共有する決意をしたことは大変に喜ばしい」
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「だが私はここに警告を発する。環境の良いこの星に人類の移民が殺到しはじめたのだ。彼らの数はまもなくカラクセナン人を追い抜くだろう。これは協定違反だ。『冬』自治共和国においてトラクポシアン人が享受しているような諸権利が、彼らにも認められているはずだ」

「私はアトミルの同胞たちになりかわってソ連邦科学アカデミーに協定違反の報告を行いたい。カラクセナンの権利は守られるべきである。人類が指導的民族であるからといって、このような収奪的進出は許されるべきでない。私はこのたび開かれるアカデミー総会においてこの点をきわめて強調した演説を行う予定である」
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しかしチャン・パンがこの演説を行うことはなかった。
2295年2月、重科学・建設公団の強固な支持を得て、彼女はソ連邦共産党書記長に選出されたからである。彼女は建設と開発を重視し、星間移民も積極的におこなった。

アトミルのカラクセナン人について聞かれたとき、チャン・パンは決まって不快そうな顔になり「あらゆる民族はソ連邦の発展のために尽くさねばならない」と言うだけだったという。