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デボラ・フェルトンは2286年、太陽系近傍のレヴォリューツィヤ星系に生まれた。少女時代は宇宙よりもピオネール活動で男子を捕まえるのに夢中だったという。

レヴォリューツィヤ軌道港軍大学へ進み、ロケット・砲術学科を卒業。アトラーント級防護巡洋艦ナジェージダへ配属され、同艦の砲術将校を経て多数の艦長職を歴任した。

地球のアアラヴ・グプタ記念軍大学を優秀な成績で卒業したあとは、第2親衛艦隊のロケット艦師団参謀長を務める。その後は師団長を歴任、赤衛艦隊司令官として宇宙軍大将の階級にまで上りつめた。
 
大協約の崩壊
デボラ・フェルトンは2345年のことを「崩壊の年」として記憶している。

この年いくつもの大同盟が崩壊した。ソ連邦の属する「大協約」も、強勢を誇った第4象限の「調和協商国」さえも瓦解したのだ。

星間移民の増加、同盟内の富の偏在への不満、そして人民のあいだに蓄積されてゆく異星人排斥感情……これらが複合し、同時に火を噴いたのだという者もいる。
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 1.2アシモフパッチは諸同盟を完膚なきまでに破壊した

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「大協約」で最初に動きを見せたのは共和ファフォッサンだった。鳥人たちは2つの属国を引き連れて同盟を離脱、光栄ある孤立を選んだ。
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続いてソ連邦が大協約から除名された。
ロレンドラからの公電にいくらでも理由は書かれていたが、もっとも重要な理由はそこに記載されていなかった。
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そう。もちろんタラッシだ。
当時、タラッシとソ連邦はきわめて関係を悪化させていた。

ファルギス星系をめぐる紛争。地球占領の遺恨。歴史認識。政体の違い。個人主義VS集産主義、精神主義VS物質主義。
「この2国のあいだに何かひとつでも共有できるものなどあったのだろうか?」
そうフェルトンは日記に記している。

大協約はロレンドラの外交努力で維持されていたようなものだ。
ファフォッサンが抜けてバランスが崩壊した今、ロレンドラはタラッシの圧力に抗することができなかった。こうしてソ連邦は銀河の路傍に叩き出された。

馬鹿なことをしたものではないか?
大協約からファフォッサンとソ連邦が抜ければ、あとに残るのは小国家2つの寄り合いだ。タラッシは科学技術では卓越しているかもしれないが、ソ連邦もビルノックとの戦争で確実にその技術を向上させている。タラッシはあきらかに誤った選択肢を選んだ。
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 ファフォッサンには3種の鳥人が混住している
 この当時はテゼキアン人が神官長を務めていた

ソ連邦の対応は冷静なものだった。
希少資源ガランティウム鉱を輸出する内容の貿易協定をファフォッサンと結び、また相互防衛条約を結ぶことに成功した。
想定された敵国はーーもちろんタラッシだ。
 
準備にぬかりなし
2352年、デボラ・フェルトンは66歳。
ソ連邦宇宙軍総司令官として職杖を握る最初の女性となった。

彼女はタラッシについては強い感情を持っていた。
まじりけのない憎悪、そして復讐心だ。 
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そもそも彼女の家系は、あの戦争のとき地球からレヴォリューツィヤに逃げてきた難民の家系なのだ。デボラは侵攻当時の残虐なエピソードをたくさん聞かされて育った。

そんな彼女だから、タラッシに対して容赦はない。
「開戦は不可避なのでしょうか?」と聞いたジャーナリストに対し、デボラはこう答えている。「開戦だと? 私たちは100年前からタラッシと戦い続けている」

軌道港ではあらたな軍艦が着工された。
宇宙軍は海兵を徴募しはじめた。
市場では商品が払底し、党の高官たちは家族を後方の星系へ疎開させた。

『コアラの奴隷か? 人民の自由か?』
激しい口調のポスターが街角にあふれ、人民はタラッシをひたすら憎悪した。そうだ。ようやくあのコアラどもを皆殺しにできる機会がやってきたのだ。

艦隊規模
戦端がひらかれる前にタラッシの兵力を調査する必要がある。
科学アカデミーの複数の調査船が敵領内に侵入し、情報を持ち帰った。
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タラッシ主力は3艦隊に分かれ、合わせて総火力30k。
これにロレンドラの15k艦隊が加わる。
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一方、ソ連邦宇宙軍艦隊の総火力は46k。(艦種別10/40/60/90)
主力同士がぶつかれば互角だが、各個撃破に持ち込めば十分に勝てる。

艦船
手持ちのカードをくわしく見てみよう。
実はずっと以前から、コロリョフ設計局では対タラッシ戦に備えた研究が進められていた。同盟を結んでいても、タラッシはソ連邦の第一仮想敵であり続けたのだ。

タラッシ主力艦はタキオンランスと破壊魚雷を装備している。これに対してソ連邦のこれまでの主力艦、防護巡洋艦アトラーント級には重大な欠陥があった。
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「シールド装備に振りすぎている」
「これでは(シールドを貫通する)魚雷に対して完全に無防備だ」
「無装甲だと(シールドが多いので)かえってエネルギーを食うぞ」  

こういった研究チームの指摘を受けて、レベル4装甲を敷きつめた装甲巡アトラーントII型が開発された。レーザー兵器に対する防御は薄くなったが、艦数でカバーできるはずだ。
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 装甲巡洋艦アトラーントII型
 
兵装は主力艦からコルベットに至るまで装甲魚雷で統一した。短/中距離魚雷の同時飽和攻撃で、敵艦の対空能力を無力化することを狙ったものだ。ソ連邦宇宙軍伝統のスウォームミサイル戦術の延長線上にあるといえる。
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 戦列艦クラースヌイ・オクチャブリ(2代目)
 239設計艦にはaura(工作艦機能)を付与した

さらにはペンディングされていた237/239設計戦列艦シリーズを10隻建造。これらは機動力には欠けるが、強固な装甲を持った浮砲台として役割を果たしてくれるだろう。

地上軍 
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地上戦装備では生物科学研究所がクローン兵を研究している。だがいまだ研究途上で、この戦争には間に合いそうもない。
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そこで窮余の策として、ゼノモーフ技術が実用化された。
ある異種生命体の幼生を人体に寄生させたものだ。時間と金がかかるが強烈な戦果が見込める。

ゼノモーフ兵には倫理的に問題があるとされたが、「志願によるもので何も問題はない」とデボラ・フェルトンは科学アカデミーに回答している。

タラッシ撃滅せよ
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戦争はソ連邦からの宣戦布告で始まった。
まず非武装の探査船・建設船が国境から発進。ローラー作戦で各星系を探査し、敵主力艦隊を捜索した。

ワームホール航法を使う敵艦隊の捜索には時間がかかったが、ティッシルム星系でこれを捕捉。デボラ・フェルトン率いる赤衛艦隊は同星系めざしてレオーノフ跳躍を行い、タラッシ第7艦隊(7k)と会敵した。
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 2353年12月10日
 ティッシルム星系の戦い

「赤衛艦隊は敵を蹂躙した」
フェルトンはそのように述べている。
「かつてタラッシとのあいだにあった技術ギャップは1世代ほどに縮まっていた。もはや彼らは恐るべき敵ではなかった」

「宇宙の深淵に薔薇の花が咲くように、タラッシ艦は次々と爆縮していった。わたしは笑みが浮かぶのを抑えきれなかった。そうだ、これが復讐の味だ」
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 2356年6月6日
 ロルデル星系の戦い

「敵の主星系ロルデルで我々は待ち伏せをくらった。レオーノフ航法で星系に出現するポイントを完全に読まれていたのだ。2つの艦隊は混ざり合い、艦と艦がありえないほどに近づいた」

「あまりに接近した乱戦だったので、衝角攻撃を試みた巡洋艦艦長もいたほどだ。だがコルベット戦隊は小回りを効かせ、身動きのとれない敵戦艦めがけて短距離魚雷をさかんに発射した」
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 右方、シールド(青い外円)が無傷のまま、船殻(内円)に激烈な損害を与えているのがわかる。魚雷戦の特性である

「我々の放った魚雷はほぼすべてが敵の船殻に通り、大きなダメージを与えた。こうして我々は確固たるドクトリンのもと多数の敵艦を撃沈したのだ」

徹底的な軌道爆撃を経て、ソ連邦宇宙軍歩兵はタラッシの主星タッラスカへと降下した。敵は頑強に抵抗した。降伏しても死が待っていることを知っていたのだろう。
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宇宙軍歩兵の英雄的な戦闘によって、惑星タッラスカを征服したのは2360年11月のことである。

こうしてタラッシ戦争は終わった。ソ連邦はこの戦争でタラッシ領の1/3(可住惑星ベース)を解放した。
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デボラ・フェルトンは征服した星系に軍政を敷いた。
まず彼女はロルデル星系をレーニンと改名。惑星タッラスカはレーニンIIIと呼ばれることになった。

タラッシ語の公的な使用は禁じられ、しばらくのち現地の協力的なタラッシ人が自治政府を樹立した。彼らはもちろんソビエト連邦への参加を表明した。
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 コアラには奴隷の鎖がお似合いだ

一般のタラッシ人はすべて二級市民として扱われた。強制労働キャンプが全土に建設され、タラッシ人のほぼすべてがキャンプで労働に従事するように定められた。

だがこれは大きな失策だった。
強制労働の実態がファフォッサンのメディアによってすっぱぬかれたのだ。

共和ファフォッサン政府はこれを事実上の奴隷制度であるとして強く非難。即時にソ連邦との相互防衛協定を破棄するという声明につながってしまった。
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「ソ連邦はパートナーシップに値しない」

ファフォッサンとタラッシは「個人主義」の性向を共有している。奴隷制については特に敏感な世論を持っているのだ。そこを考慮しなかったフェルトンの責任が追及されたが、うやむやとなって終わった。党内にも軍にもタラッシ人を憎む者が多かったからである。

フェルトンは渋々ながらレーニンIIIにおける強制労働キャンプを閉鎖。すでに収容されていた者も解放した。しかしこの事件の影響は後々まで及ぶことになる。

遠い太陽のもとで
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さてそのころ、あるソ連邦の調査隊がソルトン星系を訪れていた。
銀河内腕の旧ビルノック領にあるこの星系に、未調査の可住惑星が一つ残されていることがわかったからである。

ソ連邦がソルトン星系を併合したのはもう17年も前だが、戦争につぐ戦争でなかば忘れられていたのだった。
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調査隊はこの惑星で文明の兆候を発見した。そしておどろくべきことに
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そこに住んでいたのは人類だった!

いったいどういうことなのだろうか?
このもうひとつの人類は彼ら自身を『ドルボラン』と呼んでいた。彼らはまだ鉄を知らず、その青銅器文明はかつてのエーゲ文明を思わせる繁栄を見せていた。

調査隊の面々は容易にドルボランの中にとけこみ、その神話的な生活と荒々しい戦争の参与観察報告を送ってきた。彼らの文化は多彩で、しかしそのいずれもが人類文化にとてもよく似ていた。そして送られてきたDNAは人類のものと区別がつかないほど一致していた!

ソ連邦以前に人類が地球から進出したという可能性は科学的に否定される。とすれば、人類とドルボランが共通の播種による双子であるか、あるいはドルボランこそが人類の祖先であるかもしれないのだ。

継続的な調査が必要だ。
ソ連邦科学アカデミーは決議を行い、ドルボラン人民に対する消極的な観察を続け、その成長を阻害しないことにした。
 
ソ連邦宇宙軍艦隊の配置
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2367年6月、ビルノック残存国家との戦争に勝利したソ連邦は、銀河内腕を第一象限方向に躍進。前進基地のミール星系と本土をつなぐことに成功した。

しかし新たな問題が発生した。
国力の増進とともにその活動圏・通商路も広がり、「あの」聖鳥文明と宙域を接触することになってしまったのである。
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 国境近くの植民を控え、「領域+20%」系の研究もすべて蹴ってきた
 しかしついに単純な国力の増進によって没落帝国と国境を接してしまう

いついかなるときに攻撃があるかわからない。
ソ連邦宇宙軍は再構成され、その艦隊ごとの任務を明確にされた。
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赤衛艦隊(1🚀)26/41/72/60
ソ連邦宇宙軍艦隊の主力。レーニン星系に駐留し、タラッシと聖鳥文明の両方ににらみを効かせる。
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第2親衛艦隊(2🚀)11/65
駆逐艦とコルベットで構成された遊撃艦隊。赤衛艦隊と同じくレーニン星系に駐留する。タラッシ戦争で勇戦を見せ、「親衛」称号を与えられた。
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第3艦隊(3🚀)26/43
もうひとつの遊撃艦隊。これは太陽系に配置されている。

その他、第3象限のジャアジジャン自治共和国と遠マティン自治共和国には小規模なコルベット戦隊(4🚀, 5🚀)を配置し、辺境での緊急事態に備えている。

だが脅威とは、備えていたのとはまったく別の方向からやってくるものなのかもしれない……。
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2370年3月、第3象限の亜空間に異常な「波打ち」が検出された。ソ連邦アカデミーは総力を尽くしてこれの正体を探ったが成果はなかった。
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同5月、ジャアジジャン自治共和国に派遣されていた科学者アルベルト・マンブレッティから報告があった。
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「オクラール王国の外側宙域に時空の『破れ』が成長しつつあります。巨大な質量が『破れ』を通って当該宙域に蓄積されています。これまでに観測されたことのない、異常な状態です」

「断定はできませんが、この現象をもっともよく説明するのは次のような表現でしょう。すなわち、異次元からの侵略艦隊です」