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 「新型クローンДР-4を戦線に投入せよ」

2374年、ソ連邦はタラッシに対する2度目の勝利を手にした。
クローン兵を大量生産して戦線へ投入し、精神感応を使ってくるタラッシの騎士団を無力化したのだ。
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「我々タラッシは宇宙の調和を乱すことにこれ以上耐えられない」

強がってはいるが、彼らに対する講和交渉は一方的なものだった。
もはやタラッシには艦隊も地上軍も残されてはいなかったからだ。
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 2374年、ソ連邦(第2象限部分)
 宿敵タラッシ(白線)の残存領土は意図的に分断された
 この時期以降、ソ連邦宇宙軍艦隊はその主力をタヴァリシチ軍港(中央下)に置く

戦勝に湧く地球。
ソ連邦人民の代表である宇宙軍艦隊は、ついにあの宿敵タラッシをここまで平伏させたのである。

もう戦争はない。
すべての人民がそう信じこんでいたその頃ーー。
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ひとりの科学者が警鐘を鳴らしていた。
 
彼の名はイヴァン・クジン。
辺境のエレクトリフィカーツィヤ星系出身の工学博士だが、あるプロジェクトのリーダーを務めている。

プロジェクトの名は「ニプローシェヌイ(招かれざるもの)」
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第3象限の端、アスタルテ星系に次元の破れがあることは、現地に近いジャアジジャン自治共和国からの報告によって明らかになっていた。

その後、オクラール王国の辺境星系が謎の勢力による侵略を受け、住民が絶滅する事件があったことが判明。

この二つを結びつけ、「アスタルテ星系の門から出てきた異次元艦隊がオクラールを襲ったのではないか?」という観測が強まっていた。
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イヴァン・クジンのチームは研究の結果、アスタルテからの通信傍受に成功した。謎めいたメッセージではあるが、人類、いやこの銀河の全勢力に対する挑戦であるらしいことは見てとれる。

クジンは彼らを「人類に対する第一脅威」と判断。
ニプローシェヌイに対する早期の派兵と次元門の破壊を提言した。

ソ連邦科学アカデミーはこの提言を前向きに取り上げる方向にあったのだが……。
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2375年、マティンの牡蠣人がソ連邦に宣戦布告した。
彼らは以前ソ連邦が奪ったピサム星系を要求している。これだけなら大したことではない。すぐ終わる戦争だ。

しかしマティンの宣戦にファフォッサンが同調したというニュースが届くと、ソ連邦は辺境星系に至るまでざわめき立った。
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鳥人のファフォッサンはかつての同盟国であり、つい最近まで相互防衛協定を結んでいた国だ。フェルトン提督のタラッシ人奴隷化政策によってその協定が終わりを迎えたことは記憶にあたらしい。

ファフォッサンは艦隊規模ではソ連邦に匹敵(65K)し、さらに有力な属国を2つも抱えている。戦力的には明らかに不利な戦いを強いられることになるだろう。

ソ連邦存続の危機だ。
ニプローシェヌイへの派兵どころではなくなってしまったのである。
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ソ連邦宇宙軍は主にマティン宙域で戦闘を実施した。
ファフォッサンの遠征軍は15K単位の艦隊にばらけていたため、ファフォッサン本土から遠いマティン宙域でなら有利な戦いが期待できたからである。
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 クァド=ヴィの戦い

2377年1月1日、ファフォッサンの辺境宙域クァド=ヴィ星系にて両軍は接触。この戦争での最大の会戦が行われた。
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 ファフォッサンの軍艦は鳥というより魚のようだ

この会戦でソ連邦宇宙軍は敵主力を各個撃破することに成功。
またマティンの主星マティニなど主要惑星を占領し、有利に戦いを進めた。
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 マティン帝国の主星へ降下するソ連邦宇宙軍歩兵

だがこの時点で党は講和をはかり始めた。
敵惑星3を占領し、会戦にも勝利しているが、戦争をこれ以上長期化させると競り負けるという判断である。(それにニプローシェヌイのことがあった)
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 戦勝点では+5勝っていたが、
 早期の停戦には40p内外のペナルティがかかる
 この条件でようやく講和できた

交渉の結果、敵の要求を一定量飲むことになり、ピサム星系の2惑星がマティン帝国に返還された。また遠隔のジャアジジャン自治共和国についてもファフォッサンの影響下に独立させることとなった。

宇宙進出後、2度目の敗戦である。
だが戦闘では優位に立っていたこともあり、この交渉は国内では一貫して「白紙和平」として取り扱われた。
 
招かれざるものたち
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 2382年、第3象限

「そうこうしているうちにニプローシェヌイは勢力を伸ばしていた。いまやオクラール王国は食われ、辺境の小国となりさがった」
イヴァン・クジン博士はそのように書いている。
「小さいうちに潰しておくべきものを、一番重要な時期をマティンに邪魔された」

「遠い第3象限の話ではないか? そう考える者もいた。しかし私がニプローシェヌイの拡大のスピードを指摘すると、彼らは黙った」

「そう、ソ連邦が何も手を打たなければ、次の10年でファフォッサンの半分が食われ、その次の10年でソ連邦はニプローシェヌイと国境を接することになるだろう」

そうしてニプローシェヌイとの戦いが始まった。
ソ連邦科学アカデミーは結束し、イヴァン・クジン博士の主導のもと、この前代未聞の敵を打ち破る方法をさぐった。

「アスタルテ星系に次元門があることはわかっている。
あとはアスタルテへ向かうルートを探査船に調査させ、防衛ステーションにひっかからないルートを割り出すのだ」

「防衛ステーションにひっかかるとニプローシェヌイの艦隊がやってくる。星系内でステーションがなるべく遠い配置にかたよっている場所を調べる」
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「探査には犠牲が出るだろう。祖国ソビエトのために尽くし、侵略者から銀河を守りたいという志願者を募ろう」
 
探査船の犠牲はやはり大きかった。この段階で6隻の探査船とクルーが失われた。しかし必要な情報は得られたのだ。
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「調査の結果、オクラール王国の残存部からアルマッチ星系、ミクロルの渦を経由してアスタルテへ突っ込むルートが最有望であることがわかった」

「赤衛艦隊がこのルートで殴り込む。現段階で赤衛艦隊は90Kの総火力を有している。彼らもまた帰還することを期待してはならない……」

ソ連邦の総力を挙げた遠征が始まった。
かつてルーシ人が平原に軍を送りポロヴェッツと戦ったように、現代の兵士たちもまたおのれの国を、銀河を守るために戦おうとしている。
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「起て はらからよ
 ゆけ 闘いに
 聖なる血にまみれよ! 」

しかし赤衛艦隊はミクロルの渦を越えることができなかった。
小質量の探査船では防衛網にひっかからなかったものの、この90K艦隊の跳躍はやはり探知されてしまったのだ。

ニプローシェヌイの反応は素早かった。
常識ではありえない速度で、いずこからか艦隊を送り込んできた。まったく未知の航法だ。
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初めて邂逅したニプローシェヌイ艦隊。
容積から推測して総火力は57Kと見積もることができる。
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跳躍の場所が近かったため、戦闘は最初から乱戦気味となった。

「敵は見たこともない兵器を使用してきた」
現地の指揮官はそのように述べている。
「レーザー兵器に似ているが、光線を発するのではなく、この武器を向けられた対象物がナノオーダーで粒子崩壊を起こす。『事象破壊砲』とでも呼ぶべき、恐ろしい兵器だ」

しかし敵艦はシールドが厚く、装甲がほとんどない。そのためソ連邦宇宙軍軍艦の装備する大型魚雷がかなりの効果を上げ、戦闘は我が方に有利に推移した。
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 ソ連軍の魚雷攻撃がほぼ通っている

「ニプローシェヌイ恐るるなかれ。ソ連邦の科学力は決して彼らに劣るものではない」
現地の指揮官は宇宙軍司令部にこのように報告している。

戦闘はソ連邦の勝利で終わった。
収穫は大きかった。戦勝ということ以上に「決して勝てない相手ではない」ということがわかったからである。

だが、赤衛艦隊の損害もまた大きく、総火力は60Kにまで落ち込んでいた。このままアスタルテへの突撃を敢行するのは不可能だ。弱体化した艦隊を補充するため、タヴァリシチ軍港へいったん帰投する必要があった。

死者は悼まれ、生者は帰還を喜びあった。
こうして最初のニプローシェヌイ戦役は終わった。
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ソ連邦科学アカデミーは探査船をミクロルの渦へ送り、ニプローシェヌイ艦のデブリを回収した。これによって、事象崩壊砲などの異次元技術のリバースエンジニアリングが開始された。
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 「大艦隊政策」により艦隊枠リミット1000に到達

また後方の諸星系では大建艦が始まった。
90K艦隊ではアスタルテまで一撃突破できないことが判明したからである。新しいソ連邦宇宙軍艦隊は前代未聞の総火力140K規模を見込んでいる。
 
汎銀河戦線
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2390年、イヴァン・クジンはソ連邦共産党書記長兼科学アカデミー総裁に選出された。

クジン書記長はニプローシェヌイ対策を念頭に置き、汎銀河外交を展開。ソ連邦と同じく集産主義を取るシャブタクと交易・移民協定を締結し、さらに隣国のジラン、ファフォッサンとも相互防衛協定を結んだ。
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 ファフォッサンとの国交は再開された 
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さらに6ヶ国との間にエネルギー補給協定を結んだのは、総火力146Kに達した赤衛艦隊を自国だけでは維持できなくなったからである。

これらの交渉にはソ連邦が豊富に産するガランティウム鉱とテラフォーミングガスが役に立った。
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また、ソ連邦がその発展を後見していたドルボラン文明が宇宙進出を果たしたのもこの時期である。

青銅器文明から直接宇宙時代に入ったドルボラン人はいささかとまどうことも多かったようだ。しかし彼らはソ連邦の供与した機械や輸送機器を十分使いこなし、人類文明と同等の能力を持つことを証明した。彼らは供与されたコルベットでソ連邦の同盟軍として参戦することすら約束した。
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 2391年、汎銀河戦線

銀河の主要勢力がソ連邦を支え、ソ連邦艦隊が銀河を代表してニプローシェヌイに殴り込むという構図がこうして出来上がった。
「これで後顧の憂いなく攻められる」とクジン書記長は語ったという。
 
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2396年、ソ連邦は第2ニプローシェヌイ戦役を開始した。
総火力146kの赤衛艦隊をもって敵領ふかく再侵攻する。
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だが赤衛艦隊はアルマッチ星系でいきなり捕まった。以前の侵攻の後でまた防衛ステーションが増設されていたようだ。
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ニプローシェヌイは迅速に遊撃艦隊を送り込んできた。その総火力、50Kx3。ソ連邦宇宙軍は前回と同じく善戦し、勝利したがその傷は深かった。

威容を誇った146K艦隊は今は86Kでしかない。戦列艦と少数の装甲巡洋艦を残して多数の軍艦が消え失せた。ここまでの損害を負うのは宇宙軍建軍以来のことだ。

しかし彼らには責務がある。
アスタルテ星系へ突撃するという任務が。
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2398年6月6日。
赤衛艦隊はアスタルテ星系へとレオーノフ跳躍を敢行。ついにニプローシェヌイの次元門を直近で観測することに成功した。
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 これを潰せば勝てる……

次元門の護衛についていた35K、57K艦隊が殺到してくる。砲門がひらかれる。そして2374年以来絶えていた敵からの通信が傍受された。
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「……餌だ……」

ソ連邦宇宙軍軍人たちは背筋を凍らせた。自分たちがいま戦っている相手は憎むことも拒否することもできない、ただ殺すしかない相手だということを認識したからである。

しかし86K艦隊が110K艦隊に勝つことはできない。
接敵すると、すぐに戦列艦の損害が大きくなりはじめた。艦隊指揮官は緊急FTLを命じ、艦隊はミクロルの渦へと退避。そのままタヴァリシチ軍港へと帰投した。