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ブルフ・エルマナリキスは街道の要衝である。
このリューンの新しい都にはさまざまな商品が流れ込んでくる。リューン湖の干し魚を並べた店もあれば、ドルイニオンの葡萄酒を量り売りしている店もある。闇の森のレンバスや、くろがね連山の武具もここなら買うことができるほどだ。

流れ込んでくるのは商品だけではない。東国人、ヌルネン人、ハラド人、オーク、ドワーフ、アヴァリが荷馬車を並べてやってくる。彼らはまた遠国のうわさも運んできた。
名称未設定のコピー
「はなれ山のドワーフ王、ダイン2世がモリア奪還の軍を起こしたらしい」
「ついにか。ドワーフたちは新たな富を得るだろう」
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「ジャンゴヴァルではティベース王が即位したようだな」
「平凡だが忠義にあつい男だ」
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青の魔法使いが東国を巡行しているそうだ」
「彼らは誰の味方なのか?」
 
「それから南では半オークが勢力を伸ばしていると聞く」
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 半オークのネビュールカ公ロスティス
 東国人と交雑したためほぼ人間の見かけをしている

モルドール崩壊後、リューンの南方を縁取るエレド・リスイの向こうでは、数々のオーク政権が自立していた。なかでも急速に勢力を伸ばしつつあるのがネビュールカの半オークたちだ。

ネビュールカは近ごろ砂漠の遊牧民を支配下に入れ、リューンと国境を接していた。リューン王ハルガスンは彼らの拡大を快く思わなかった。そこでハルガスンは諸侯に命じ、ネビュールカに対する戦役を行うことにした。
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 11382年 ネビュールカ戦役
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 ハルガスン次男タガイ
 兄に似て戦上手

「兄上と鞍を並べて戦えるとはありがたき幸せ」

この戦役ではハルガスンの息子たちが軍の指揮を取った。若き王子たちの勇ましさに軍の士気は上がる一方だ。
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 エレド・リスイを越え、モルドール旧領へ侵攻

かつてのモルドールの領域に侵攻するとあって戸惑う者もあったが、ハルガスンは動じなかった。もはやサウロンは亡く、モルドールは周辺列強の草刈場と化しているのだ。
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11386年8月、戦役はリューンの勝利に終わった。
ハルガスンは捕らえた半オークたちをリューン湖畔の奴隷農場へ送り、余った奴隷は市場で売りさばいた。
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 南へ拡大するリューン王国
 
反乱
11389年、リューンに反乱が起きた。
最初は重税に苦しむ農民たちの反乱だったが、トクタマノグル家に不満を持つ中小族長たちの支持を得て反乱は全土に広がった。ハルガスンは親衛重歩兵を率いてこれらの反乱をしらみ潰しにしていったが、なかなか反乱はおさまらない。

ある日ハルガスンが戦線に出ると、反乱軍側から緑の旗を流した騎兵が単騎でやってくるのに出会った。軍使である。軍使は親衛軍の手前までくるとこう呼ばわった。
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「ハルガスン王に告ぐ!
われらの指導者、アヴルドリムのタガイは王との一騎打ちを提案している。われらは勇敢なるハルガスン王がこの申し出を受けると固く信じる」

こうまで言われては黙っていられない。
ハルガスンは部下たちの静止もきかず、東国刀をさらりと抜きはなって戦線の中央へ歩いていった。

アヴルドリムのタガイとの打ち合いは延々1時間に及んだ。ハルガスンは相手を倒し、首領を失った反乱軍は総崩れになった。

しかしハルガスンもまた右足に傷を負っていた。傷は浅いが、刃に毒が塗ってあったため治りが悪く、足をひきずって歩かねばならないようになった。
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 負傷したハルガスン
 老いたもののまだまだ元気
 このころ首都ブルフ・エルマナリキスを開発したおかげで
 イベントスポーン兵4500を加えて9100の兵を運用できるようになった

反乱が収束したころ、アガシャ=ダグのガエラグラルからひさしぶりに宴の誘いがきた。
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 絶交したはずなのに……

「傷の具合はどうだ、ハルガスン」
「悪くはないがよくもない。それよりなぜ私を呼んだ。われらはすでに敵だろう」
「そのことだ、実は私も思い悩んでいた。おまえのように勇敢な男とこのまま仲違いして死ぬわけにはいかない。すべて水に流して、もう一度始めようじゃないか」

ガエラグラルの言葉はハルガスンの胸を打った。こうして二人は手に手をとって、新たな友情を確かめあったのだった。
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 しかしまた喧嘩をする二人
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 宴で火のまわりで踊って火傷をし
 右足の傷を悪化させるという情けない事件もあった
 
ハラドワイスへ
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11394年、南方ではヴァリアグ人のハンド遊牧帝国がハラドワイスに勢力を拡張していた。ヴァリアグもまた東国の民であり、リューンはその帝室にリューン人の姫を送り込んでいた。

ハンドは新征服地であるネビュールカに面していたので、この地を訪れたハルガスンは南へ足を伸ばし、ハンド皇帝の巻狩りに参加することがよくあった。
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ハンド皇帝、ラダムサデス2世はハルガスンを歓待し、巻狩りの賓客として彼を迎えた。二人はよく気が合い、狩が終わったあとはともに朝まで痛飲したという。

ある日、ラダムサデス2世はハルガスンにこう言った。
「このたび、大海に面するアコール領を攻めることになった。ついては盟約にしたがいリューン王の出御を求めたいと思うが、どうか。ともにハラド人を打ち破り、この目で大海を見ようではないか!」

ふつうに考えてみればあまり益のない提案だ。
まずハラドワイスは遠いし、リューンがなにかを得られるという保証もない。
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しかし、リューンは東国の民の盟主を自負している。援軍を求められたなら断るわけにはいかない。それになにより、こういう誘いを断れないのがハルガスンという男だった。

そういうわけで、老身をおして南方へ遠征することになった。
右足はもう使い物にならなくなっていたので、馬ではなく輿を使った。屈強なハラド人奴隷4人に支えられブルフ・エルマナリキスを出御するハルガスン王の姿は、つづれ織りになって今でも残っている。
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ハラドワイスは遠かった。
暑熱の地方であり、東国の冷涼な気候に慣れたリューン兵は次々と脱落していった。しかしそのなかでも3200人はハルガスン王につきしたがい、大海を望むアコールにまで到達した。

アコールのハラドリムたちは勇敢に戦った。
力押ししか知らないリューン軍と違って、彼らは弓騎兵による騎射戦術をもってリューン軍を翻弄した。

しかしハルガスンは前線にあって号令を出し、リューン重歩兵は着実に前進した。その圧力に耐えきれず、アコールの中央が後退した。それを追ってさらに前進。さらに前進。

気づくと、ハルガスンは自らが荒野のただなかで孤立しているのに気づいた。アコールの軍勢がじわじわと包囲の輪を縮めてくる。ハルガスンは輿を降り、刀をぎらりと抜きはなち、東国語でこう呼ばわった。
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「われはリューン王、トクタマノグルのハルガスンなり! ハラドの民にわれと手合わせを願うものはおらぬか!」
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するとアコール軍のなかから一人が進み出て、堂々たる西方語でこう答えた。
「われはヌーメノールの黒き裔、ケレファルンの息子ケレファルンなり! ぜひともリューン王と手合わせを願いたい」

二人のために道が開けられた。
日は高く、全軍が静まりかえり、二人の決闘を見守る。
リューンの刀とヌーメノールの剣が触れ合ったそのとき——。
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 ハルガスン王、はるか南の地で決闘に倒れる

アコール軍の軍使によって、王の亡骸はリューン軍のもとに丁重に送り届けられたという。

こうしてハルガスンは64歳の生涯を終えた。
指輪戦争、ドルイニオン戦役、ネビュールカ戦役といった数々の戦いを経験し、最後は剣によって倒れた。領土を拡張したすぐれた王であり、歌に歌われる勇敢な戦士だった。