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その年はアレクサンドロス大王の死から数えれば18年目であった。大王について重ねて語る必要があるだろうか? ナイル河からインダス河にまで及んだ彼の遠征は世界の形を変えた。しかし彼は早く死に、その後継者たちは王国の各地に割拠した。

ここバクトリアはスタサノルのサトラペイアだった。キュプロスの人であるスタサノルは大王と鞍を並べて戦ったのち、この地を与えられた。その後の数々の政変でも生き残ったが、ついにセレウコス・ニカトールの東征によって領地を失った。
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セレウコス・ニカトールはバビロンへ入城したあと東征をおこない、エウフラテス河以東の諸サトラペイアを我がものとした。バクトリアに住むわたしたちは、ここがセレウコス朝王国の一部でなくなってしまってからも、彼のバビロン入城から数えた年をセレウコス歴として用いている。

というわけで、この話はセレウコス暦8年のバクトリアから始まる。
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バクトリア!
イマオン山に抱かれた美しい谷間の国よ。
春になれば大量の雪解け水がオクソス川にあふれ、遠く漠北の地へとながれてゆく。山がちな畑には小麦と大麦、ムラサキウマゴヤシが輪作され、ここで育った馬はサカ人の馬にもひけをとらない。

バクトリアはいくつもの街道筋が交わるところでもある。東へゆけばセリカ、南へゆけばインド、西へゆけばメディアとバビロニア、北へゆけばスキュティア人の住む草原地帯がひろがっている。隊商がさかんに往来し、その商いぶりは遠くセレウケイアの都にまで届いた。
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 初手でCivicアイディアのComplex Tariffsを選択、商業収入をブースト
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 外交姿勢もMercantile Stanceに
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 CommerceはFree Tradeを選択し、交易路を増やす
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 首都バクトラでは穀物を国内から輸入
 州ボーナスの人口増加と国家ボーナスの人的資源増加を狙う
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ここに住むのはバクトリア人とソグド人。ともにアフラ・マズダーを崇め、火を聖なるものとしている。彼らの多くは農業を営み、少数の者が商業を行う。後者はアラム語もギリシア語もよくし、わたしたちとの会話に不自由がない。

ところどころに退役したマケドニア兵やギリシア人傭兵がクレルコイとして都市を作り住んでいる。都市の名は一様にアレクサンドレイアだ。アレクサンドレイア・マルギアナ、アレクサンドレイア・オクシアナ、アレクサンドレイア・エスカテ(最果てのアレクサンドレイア)……。ギリシア人たちは市民として社会の上層を牛耳っているが、みずから望んでここへ来たわけではなく、彼らのあいだには不満がくすぶっていた。

そして幾度となく反乱が起きた。傭兵たちがギリシアへ帰国するための反乱である。反乱は成功することもあり、失敗することもあった。成功した場合でも、ギリシア人傭兵たちの足跡はバビロニアあたりで消えている。おそらくはそこで撃破され、処刑されたのだろう。
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セレウコス・ニカトールがバクトリアの新しいサトラップとしてソフュテスを任命したのは、このような土地柄だったからかもしれない。

ソフュテスは北方のサカ人の出身で、若い頃から軽騎兵としてアレクサンドロス大王に仕えた歴戦の軍人だ。スタサノルの幕僚の1人であり、兵からの信頼あつい傭兵隊長でもある。イオニア方言のギリシア語を話し、軍神アレースを崇拝し、ほとんどギリシア人のようだと言われていた。

「汝が王国東方の守りだ、ソフュテス」
セレウコス・ニカトールはソフュテスにそう言った。
「21000の軍勢を汝に与えよう。内訳はマケドニア人重騎兵が7000、重装のギリシア人傭兵が7000、サカ人の弓騎兵が7000だ」

だがソフュテスはサトラップに任命されてすぐ、バクトリア軍の半分を解散した。維持するだけのタラントンがなかったのだ。さいわいバクトリアはセレウコス朝のサトラペイアなので、いざというときには本国の増援が望めるはず。
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しかしセレウコス暦9年、セレウコス・ニカトールはマウリヤ朝に対して東方諸州をゆずり渡し、かわりに象兵500を受け取った。このためバクトリアはやわらかな下腹をマウリヤ朝に対してさらすことになり、俄然緊張が高まった。

「大変なことになった!」
ソフュテスは焦ったがどうしようもない。王には王の考えがある。この巨大な王国を端から端まで統治するのが難しいことは一面の真理であった。
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 王都セレウケイアとバビロンは人口稠密な両河地方にある
 ここから見れば東方辺境は遠い国だ
 バクトリアの事情にかまっていられないのもわかる

ソフュテスは退役した古参兵を中心に軍の再建にとりかかったが、この負担はバクトリアに重くのしかかった。できれば最低限の軍備で行きたかったのだが……。
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 軍事伝統はグレコ・バクトリアルートを選択
 軽騎兵と要塞を重点的に開発した

「インド人はかならずやってくる。それまでに軍備を整えなければ」
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予想されたマウリヤ朝の侵攻はそれから8年後、セレウコス暦17年にはじまった。

マウリヤ朝の総兵力は90000と見積もることができる。対してバクトリアは20000、宗主国のセレウコス朝ともうひとつのサトラペイア、パルティアを合わせると85000。なんとか互角である。

主戦線はゲドロシアやカルマニアといったインドーペルシア国境地帯の砂漠だった。しかしバクトリアもまた戦場となり、何年ものあいだカウカーソス山脈をはさんで激しい攻防が繰り広げられた。

「——峰々に白い雪をいただく高山を縫って、荷駄を背負った細い隊列がずっと続いてゆく。山肌は石ころに覆われ、すべてが灰色だ。谷は深く、いくつもの支谷に別れている。この谷ひとつを取るのに数百人の命を要した」(あるギリシア人傭兵の従軍記)
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 金床の役割を果たすカラクの国境要塞
 これを攻囲するマウリヤ朝軍を
 バクトリア軍がハンマーのように叩こうとしている

バクトリアのマケドニア人重騎兵は山岳を機動することが難しく、ここではソフュテス率いるペルタスト軽歩兵が活躍した。バクトリアに配流された銀盾隊(アレクサンドロス大王軍の精鋭部隊)の老兵たちもまたカウカーソスで戦ったという。
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しかし、ああ!
ソフュテスはドラプサカの戦いで死んだ。
まるで雑兵のように象に踏みにじられて。
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あとを継いだのは長子のアマンタス。まだ10歳の少年だ。もちろんまだ政務を取ることはできないので、2人の将軍が彼を補佐した。
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 レオニダス家のアゲシポリス
 バクトリア生まれのマケドニア人
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 狡猾のウィウス
 ソグド人貴族アルクサタン家の長男

この2人の将軍はよく協調してことにあたり、マウリヤ朝戦役を戦い抜いた。
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峻険なカウカーソス、その峰々がどれだけの戦士の血を吸ったことか。人々が戦に倦み疲れてきたころ、ようやく6年にわたる戦役が終わりを告げた。セレウコス朝とその属国はゲドロシアの南岸をマウリヤ朝から奪取し、勝利した。かくてバクトリアの地は守られたのである。
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 もうひとつの明るい知らせ
 はるかギリシアのオリュンピアに派遣していたバルズン・オルザンがオリンピックで勝利を飾った(ギリシア人でないことはばれなかった)

独立
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「彼には失望した」
「父親とは大違いだな」
「統治の才がまるでない」
人々は声を低くしてうわさした。

ソフュテスの子アマンタスが成人すると、バクトラの都ではギリシア式に盛大な祭儀がとりおこなわれた。しかし人々の評判どおり、彼には統治の才がまるでなく、愚かで、赤痢持ちだった。親政が始まってからもその評判は変わらなかった。
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 『嫉妬のアマンタス』という二つ名までついてしまう

しかし、彼の評判をもっとも落としたのは宗主国セレウコス朝に対する反逆である。
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セレウコス暦39年にメディア地方へのパルニ族侵攻があり、かねてより内乱の頻発していた王国は大分裂を起こした。このとき救援を求めてきたセレウコス朝の使節に対して、アマンタスは侮辱を与え宮殿から放り出したのだ。
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 関係が良すぎて侮辱しないと開戦できなかった……
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 セレウコス朝はアンティオコス王に代替わりしている

なぜアマンタスはそのような所業に及んだのだろうか。気がおかしくなりでもしたのか。否、それには複数の理由があったと思われる。

まず、バクトリアは毎月5タラントンにあたる上納金をセレウコス朝に支払っていた。国家の月収入が15タラントンにすぎないバクトリアにとってこれは大きな負担だ。

次に、セレウコス朝のサトラペイアであるバクトリアは独自の外交を、もっといえば戦争を許されていなかった。戦争ができなければ拡張もできない。北東辺境でみずから生きていかねばならないバクトリアにとって、これは痛手だった。

最後に、セレウコス朝の命運が尽きたように思われたこと。援軍をよこしてくれる以上は臣従している意味もあったが、今後は援軍も期待できないとなれば……。

こういった理由がそろったためにアマンタスはアンティオコス王に対して宣戦し、独立を宣言したのだろう。だがアマンタスはそういったことを臣下にいちいち説明しなかったように思われる。それが君主というものだ。それで彼の評判は今なお悪い。
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 独立と同時にスキュティアのサカ人と同盟を組んだ

主戦場はパルティアとなったが、セレウコス朝軍は諸反乱勢力に邪魔されてパルティアに軍を送ることができなかった。そういうわけで、戦争は比較的早くに終わった。白紙和平が結ばれ、バクトリアに対するセレウコス朝の宗主権は霞のごとく消え去った。

このあとアマンタスはセリカに通じるフェルガナ盆地に軍を送り、現地の土候国を併合している。さらにその後はサカ人の求めに応じて西のコラスミアへ軍を送った。
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 併合により都市数が100を超えたのでリージョナルパワーからメジャーパワーに
 この地域に他のメジャーパワーはなく、同盟相手に困ることになる
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 フェルガナについては弟のパントルダノスを総督に据えた
 しかしあまりの不人気ぶりにこれを召喚
 旧王であるアユス・セムシャンを総督にした
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 コラスミアについても旧王ジュナナカムンドレを総督に抜擢
 麻のごとく乱れていたコラスミアは嘘のように安定した

こうして独立バクトリアの歴史は順調な滑り出しを見せた。

次回、黄金の舌